こんにちは
歯並びをきれいにしようとしても、歯を並べるスペースが足りないときれいには並べられません。
そのようなときの治療法はいろいろありますが、その一つに拡大装置という矯正装置を使った治療法があります。
”拡大”とつきますから、何かを大きくする矯正装置というのはイメージできると思いますが、一体何を拡大するのでしょうか。
今回は、矯正治療で用いられる拡大装置についてご紹介します。
〇拡大装置とは
拡大装置とは、ネジやワイヤーの弾力性を利用して、歯を並べるスペースを広げる矯正装置です。
骨に作用する急速拡大装置と、歯に作用する緩徐拡大装置の2種類があります。
●急速拡大装置
急速拡大装置は、接着剤で歯にくっつける固定式の拡大装置です。
急速拡大装置は強い力が発揮できる拡大装置で、上顎の骨そのものを広げます。
●形
急速拡大装置は、歯にくっつける金属製のバンド・バンドからのびる太めのワイヤー・左右のワイヤーをつなげている拡大ネジから作られています。
なお、急速拡大装置は、上顎の歯に装着するタイプだけですので、下顎には使えません。
●使い方
急速拡大装置の真ん中についているネジを術者が回します。
すると、太いワイヤーが左右に広がります。
一般的には1日にネジを1/4回転させます。
すると、0.2mmほど左右に広がります。
これを毎日繰り返し、1~3ヶ月程度の時間をかけて、顎の骨の横幅を広げていきます。
横幅が十分広がったら、それ以上はネジを回す必要はありません。
ですが、すぐに取り外すわけではなく、顎の骨が安定するまでさらに6ヶ月程度装着したままにします。
●効果
上顎の骨の中央には、正中口蓋縫合という骨のつなぎ目があります。
この縫合部分で左右の骨がガッチリとくっつけられることで、上顎骨は一つの大きな骨になっています。
大人になってしまうと、この正中口蓋縫合はもうびくともしませんが、子供の頃なら、左右に力を加えると縫合部分が広がります。
広がった部分には新しい骨が造られ、隙間が埋められます。
こうして、急速拡大装置は顎の骨の横幅を広げます。
このような仕組みなので、混合歯列期という乳歯と永久歯が混在した乳歯から永久歯へ生え替わっていく時期、永久歯だけになって間もない時期に用いられます。
具体的には6~12歳前後です。
なお、急速拡大装置の作用で縫合部分が広がったとしても、顎の骨が二つに分かれるわけではないのでご安心ください。
〇緩徐拡大装置
緩徐拡大装置は、急速拡大装置と違い、弱い力で歯を少しずつ外側へ傾けるように移動させる拡大装置です。
歯に作用する矯正装置なので、顎の骨を大きくするような働きはありません。
緩徐拡大装置には、接着剤でくっつける固定式と、人工歯がない部分入れ歯のような形の付けたり外したりできる取り外し式の2タイプがあります。
また、急速拡大装置と違い下顎骨につけるタイプもあります。
●形
固定式の緩徐拡大装置は、歯につける金属のバンドとワイヤーで作られていますが、急速拡大装置と違い、拡大ネジはついていません。
ワイヤーの弾力性を利用して、歯を傾けます。
取り外し式は、床と呼ばれるプラスチック部分と歯に引っ掛ける金具、そして中央部分の拡大ネジでできています。
●使い方
固定式の緩徐拡大装置は、ご自身で特に何かすることはありません。
定期的に歯科医院で調整を受けていただくだけです。
取り外し式の緩徐拡大装置は、ネジを回していただいて、歯にセットします。
●効果
急速拡大装置は顎の骨の横幅を広げますが、緩徐拡大装置を使っても顎の骨が広がるわけではありません。
緩徐拡大装置は、歯を外側に向けて斜めに傾けることで、歯並びを広げ、歯を収めるスペースを確保します。
急速拡大装置と違って、骨に作用せず、歯の傾きによってスペースを確保しますから、緩徐拡大装置に年齢制限はありません。
〇拡大装置のメリット
拡大装置にはさまざまなメリットがあります。
●急速拡大装置のメリット
急速拡大装置の1番のメリットは、顎の骨を横に広げることで、歯を並べるスペースを確保できる点です。
骨を広げて歯を並べるスペースを確保できれば、歯を抜くことなく、かつ無理なく歯並びをきれいに整えられるからです。
また、上顎骨の成長を促進することで、上顎と下顎の骨のバランスも整えられるという利点もあります。
1~3ヶ月ほどで拡大が完了するという速さも急速拡大装置のメリットといえます。
●緩徐拡大装置のメリット
取り外しタイプの緩徐拡大装置なら、取り外すことで拡大装置のお手入れや歯磨きがしやすくなるというメリットもあります。
急速拡大装置と違い年齢制限がないですし、痛みも出にくいのも、緩徐拡大装置の利点です。
〇拡大装置のデメリット
拡大装置には、メリットだけでなくデメリットもあります。
●急速拡大装置のデメリット
急速拡大装置は歯に接着する固定式の拡大装置なので、ご自身で取り外すことができません。
食べ物が引っかかったり、歯磨きがしにくかったりします。
慣れるまでの間は、話しにくくこともあります。
また、混合歯列期から永久歯列期の初期までしか使えないという年齢制限も急速拡大装置の難点です。
●緩徐拡大装置のデメリット
緩徐拡大装置は、骨を広げるのではなく、歯を外側に傾けることで、スペースを確保します。
傾けすぎると歯並び自体がおかしくなってしまいますから、確保できるスペースには自ずと限界があります。
また、取り外しタイプの緩徐拡大装置の場合、1日あたり少なくとも12~15時間は装着していないと効果が得られません。
つけ忘れたり、つけること自体を嫌がったりする場合、効果が出なくなること、”緩徐”というだけあって、1~2年ほどかかってしまうのもデメリットに含められます。
〇まとめ
今回は、矯正治療で用いられる拡大装置についてお話ししました。
拡大装置には、急速拡大装置と緩徐拡大装置の2種類があります。
急速拡大装置は、上顎骨の横幅を広げる矯正装置で、成長期のお子さんに使用します。
緩徐拡大装置は、骨格自体は大きくはなりませんが、歯を外側に向けて傾けるように移動させることで歯を並べやすくします。
緩徐拡大装置は、成長期が過ぎたのちにも使われることがあります。
どちらにもメリットもデメリットもあり、症状に応じて、適した方法を用いることで理想的な歯並びを目指します。
もし、拡大装置にご興味のある方は、一度当院でご相談ください。