〇滅菌と消毒って違う?

滅菌と消毒という言葉を正しく説明できる方はいらっしゃるでしょうか。             どちらも清潔にするということに変わりはありませんが、明確な違いがあります。         どのような違いがあるか確認し歯科医院ではどの様な滅菌・消毒を行っているかを確認しましょう。

●滅菌とは

滅菌とは全ての微生物を殺滅させるか、完全に除去することを指します。             滅菌すると細菌はもちろんウイルスも死滅します。                       日本薬局方では微生物の存在する確率が100万分の1以下になることをもって、滅菌と定義しています。したがって、一番清潔な状態といえます。

●消毒とは

消毒は人体に有害な微生物の感染性をなくすか,数を少なくすることを指します。         滅菌と比較すると少し緩い感じがします。                           しかし、滅菌は全ての使用器具や備品などには適用できません。                  その場合には消毒をし、感染させることのない様に配慮をして処置を行います。

滅菌や消毒の定義を確認した上で、どの様にしてそれぞれ行っているかを確認しましょう。     消毒や滅菌にはどちらも化学的な方法と物理的な方法があります。                物理的な方法は効果が確実で経済的にも優れています。                     一方でそれを選択できない器具や材料は消毒液による化学的方法をとることになります。

〇滅菌の方法

滅菌の方法には大きく分けて2通り

①滅菌法

②濾過法

に分けることができますが、一般的に診療所単位で行うのは①の滅菌法です。           その中でも加熱法です。                                   加熱法の中ではオートクレーブが一般的です。                         オートクレーブは別名『高圧蒸気滅菌器』とも呼ばれています。                  121度から135度に熱した蒸気を用いて、内部を高温高圧状態にすることによって滅菌状態にします。 金属製品やガラス製品、歯科で用いる口の中に入れる器具などの多くはこれで滅菌しています。   器具をそのままオートクレーブするものもあれば、袋にパックしたものを滅菌して使用することもあります。

●その他の滅菌方法

その他の滅菌方法としてガス滅菌や乾熱滅菌があります。                    ガス滅菌はその名の通りガスを使用します。                          オートクレーブのように高温にしないためゴムやプラスチックの滅菌には向いています。      しかし、ガスをきちんと処理できる施設が整っていないと使用はできません。           乾熱滅菌は高温でありながら蒸気は出しません。                        オートクレーブよりも時間がかかることが特徴です。                      これらから一般的にはオートクレーブが広く使用されています。                 歯を削る機械などもオートクレーブに対応しているものが多くなっており、消毒の水準ではなく滅菌の水準での治療が今日では可能となってきています。

〇消毒の方法

消毒と聞くと最近ではコロナウイルスの関係もあり、アルコール消毒を思いつく方も多いかもしれません。                                            薬剤を使用する消毒方法にはいくつか種類があります。                     アルコールも代表的ですが、それ以外にも次亜塩素酸ナトリウム水和物やグルタラールという高水準消毒薬まで存在します。                                    基本的には滅菌を行いますが、行えない器具や場所、環境に対しては消毒を行うことが一般的です。 消毒には低水準から高水準のものまで薬剤があります。                     高水準のものは人体の粘膜や皮膚には使用することができません。                 手術などで手を洗う時には中水準の薬剤を使用することが多いです。

●その他の消毒方法

消毒方法は上記に記載した化学的な方法が一般的です。                     その他には物理的な消毒方法があります。                           煮沸法や間歇法、紫外線法などが該当します。                         いずれも化学的に消毒薬を使用するよりも頻度が低く、あまり行われません。          したがって、基本的には消毒薬で滅菌できない箇所を消毒する方法が行われています。

〇滅菌する器具と消毒する器具

滅菌と消毒の方法を確認した上で、どの様な器具や場所を消毒したり滅菌したりするのか確認しましょう。                                            オートクレーブによる滅菌はオートクレーブに入れることが可能な基本的に小さい器具に対して有効です。                                            また、高温高圧になるためそれに耐えられる器具が適応となります。               オートクレーブ使用なものは金属製品、ゴム製品など多岐に渡りますが、一般的に口に入る金属器具は滅菌可能です。                                       歯を削る機械なども滅菌可能です。                              消毒するものは人体に直接触れる部位や滅菌できない器具に対して使用します。          治療する椅子やエプロンなどもその例です。                          エプロンや紙コップ、器具を乗せるトレーなどは使い捨ての物をしようする診療所もあります。

〇まとめ

滅菌と消毒の定義から歯科医院ではどの様な方法で器具などの滅菌や消毒をしているかを確認してきました。                                           大昔は手袋を使用せず素手で治療していた時代があったかもしれません。             しかし、感染対策や医療事故防止の観点から手袋はもちろん使用する器具に対する滅菌の概念も変わってきました。                                        歯を削る道具を滅菌せずに使い回す様なことが昔はあり、報道などでも取り上げられてきた過去があります。                                           現在はスタンダードプリコーションという感染対策の概念があります。              当たり前の様に適切に滅菌・消毒した清潔な器具を用いて治療を行う様になっています。        安心して治療を受ける様にしてください。