こんにちは
患者さんからの質問の中に、治療中の予約の取り方についての質問が時々あります。 仕事や学業等で通院が難しく、次の治療まで間が空いても良いかという質問です。
治療中の方は治療の内容によっては、治療の効果が期待できなくなるケースや治療が進まなくなるケース、中には現状よりも悪くなるケースが存在します。
基本的に治療途中の場合は通院を続けないと悪い状況になる可能性があるのでお勧めできません。
今回はよくある治療ケース別に治療継続すべき理由と起こりうる悪影響について解説していきます。
〇治療別にみる医療を継続すべき理由①根管治療において
歯科治療において虫歯が大きくなり神経を取る治療をする方は多いと思います。 この治療は可能な限り早く終わらせる方が予後が良いと言われています。 というのも根管治療中は根管内を可能な限り無菌的(細菌が存在しない)に治療をする必要があるからです。
●治療期間中の歯の変化
治療中に次回までの予約が開いてしまうとどうなるでしょうか。 口の中には様々な菌がいます。
それらが根管内に入ってしまうと、後に根の先が化膿してしまったり、炎症を引き起こしてしまう可能性が出てしまいます。
治療後は仮蓋(仮封・かふうと呼ばれる)をして次回の来院まで過ごしてもらうのですが、それは長持ちするものではありません。
仮に仮蓋が取れないからといって1ヶ月以上通院しなかった場合、根の中に細菌が入り込んでいる可能性があります。 細菌は当たり前ですが目に見えないものです。
仮蓋は一部が剥がれたり、周囲から汚染が漏洩してしまう可能性があるので1、2週間単位での通院は必ず行うようにしましょう。
●根管治療中に歯を放置した場合
稀に根管治療中に痛みがないからといって仮蓋が外れたまま、放置してしまう方がいます。
その場合は根の中の感染が強くなり、いくら治療をしても根管内の汚染が取れない場合や根管からの出血や膿が止まらない場合があります。
こうなると抜歯になることもあります。
もし来院出来ない予定があるのであれば、仮蓋を固いものにして外れにくくするなどの対処はしますが、絶対に大丈夫とは言い切れません。
根管治療は治療の中では特に通院について真剣に向き合う必要があります。
この治療がうまくいかないと抜歯になる可能性があるので十分注意が必要です。
〇治療別にみる治療を継続すべき理由②補綴治療において
治療の中でも詰め物や被せ物の治療は日常多く行われます。
詰め物や被せ物の治療は補綴治療と呼ばれます。
補綴治療の多くは歯型をとり、それを元に詰め物などを作成します。 ここでは、型取り後に来院することが出来ない場合を考えます。
●歯の位置や状態の変化
型取り後に治療期間が空くと歯の位置が微妙に変わることがあります。
特に元の歯が倒れている場合や仮歯が取れたり壊れたりした場合などは出来た補綴物が入らなくなることがあります。
型取りした時点での歯の位置と来院時の歯の位置がズレてしまうことに起因します。
この場合にはズレを修正するように補綴物を修正してみますが、極端に歯に合わない場合は再度型取りをすることもあります。
次回までの予約まで間が開くと仮歯や仮詰めの縁から再度虫歯になることも考えられます。
この場合は再治療が必要になります。
●歯茎の変化
変化するのは歯だけではなく歯茎も変化します。
型取り後には仮歯や仮詰めをすることがあります。
これらは歯の位置が極端に変わらないようにし、削った歯の面を保護するなどの役割があります。
一方で仮の物なので周囲に汚れが停滞しやすいこともあります。 そのため歯茎が腫れることがあります。
すると完成した補綴物が腫れた歯茎に当たり、入りにくくなったり、痛みが出たりすることがあります。
以上のように歯やその周囲の変化により予定していた治療がうまく進まないことがあったり、余計な回数や手間が必要になることがあります。
〇治療別にみる治療を継続すべき理由③虫歯治療において
虫歯治療は大きい物でなければ1度で終わるケースもあります。 型取りなどにならなければ当日で終わることもあるでしょう。
この場合には心配することはほとんどないです。
しかし、中には虫歯の大きさが比較的大きく神経の治療にならないまでも一旦仮詰して痛みの有無を確認してから進めることもあります。
その場合に通院が出来なくなるとどうなるでしょうか。
●仮詰めする処置が行われた場合
このような場合は最終的な詰め物を入れるまでは終わりではありません。 少し経過を見ることを必要とするので極端に次回の予約が開かなければ心配いらない場合が多いです。
しかし、あくまで仮りなので長く放置すると仮詰めの周囲から再び虫歯が入ることもあり、さらにそのまま放置すると根管治療になる恐れもあります。
必ず最終的な補綴物を入れるところまで終わらせましょう。
●その他の部位にも虫歯がある場合
その他の部位にも虫歯があれば、その1本1本について治療方法を考える必要があります。
ある程度はレントゲンの写真などから虫歯の大きさの予想は出来ますが、実際に虫歯の治療をしてみると思いのほか大きくなっていたということもあります。
つまり実際に治療をすると治療方針が変わることがあります。
当初予定していた回数を超える可能性があることは覚えておいてください。
虫歯はそのままにして治るものではありません。 少しづつ進行していくものなので、治療する時間を設けて早めに終わらせる方が全体の治療時間や期間が短くて済むでしょう。
〇まとめ
今回は歯科治療でよく行われる治療のケース別に次回までの予約が空いても平気なのかを確認してきました。
基本的に治療中の歯は継続して治療をされた方が良いことは前述の通りです。
治療が空いてしまうと思った通りの治療結果が得られないことにつながることもあるので注意が必要です。 時として歯を失うことにもなり得ます。
患者さんは仕事などで都合がつけられないこともあり、時として歯医者から予約の取り方についてきつく言われてしまうこともあるかもしれません。
いい気持ちにはならないかもしれませんが、患者さんを思って言っていると思ってもらえると幸いです。