インプラント治療を受けた後、歯科医から「2か月間は噛まないようにしてください」と言われることがあります。せっかくインプラントを入れたのに、すぐに使えないのはもどかしいと感じるかもしれません。しかし、この期間はインプラントがしっかりと定着するために非常に重要です。
この記事では、インプラント埋入後に噛むのを控えなければならない理由や、その期間中の注意点について詳しく解説します。
1. インプラントが骨と結合するための期間が必要
インプラント治療では、人工歯根(インプラント体)を顎の骨に埋め込みます。しかし、埋め込んだ直後はまだ骨と完全に結合しておらず、不安定な状態です。この状態で噛むと、インプラントが動いてしまい、最悪の場合、骨との結合がうまくいかずインプラントが失敗してしまうことがあります。
この「骨とインプラントが結合する」プロセスを オッセオインテグレーション(骨結合) と呼びます。
オッセオインテグレーションには、通常2〜6か月ほどの時間がかかります。
特に上顎の骨は下顎に比べて柔らかいため、下顎よりも長めの期間が必要になることが一般的です。そのため、最低でも2か月はしっかりと待つことが求められるのです。
2. 初期の安定性を保つため
インプラントを埋め込んだ後、すぐに強い力を加えてしまうと、インプラントがわずかに動いてしまい、骨との結合が阻害されます。これは「インプラントの動揺」と呼ばれ、最悪の場合、インプラントが脱落してしまう原因になります。
特に治療初期の2か月間は、 インプラントの初期安定性 を維持するための重要な期間です。この間に無理に噛んでしまうと、インプラントの成功率が下がってしまいます。
3. 骨の再生と治癒のため
インプラントを埋め込む際、歯ぐきを切開したり、骨を削ったりするため、組織がダメージを受けています。そのため、術後は 歯ぐきや骨が回復する時間 が必要です。
手術後すぐは、インプラント周囲の骨がまだ柔らかく、再生が進んでいる途中のため、噛むことでその回復を妨げる恐れがあります。インプラントの周囲の骨がしっかりと硬くなるまでの間は、過度な力を加えず、自然な治癒を促すことが大切です。

4. インプラント周囲炎を防ぐため
インプラントは人工物ですが、その周囲の歯ぐきや骨は自然の組織です。インプラントを埋めたばかりの時期は、まだ周囲の組織が完全に安定していないため、細菌感染のリスクが高まります。
特に、噛むことで食べ物のカスがインプラント周囲にたまりやすくなり、炎症(インプラント周囲炎)が起こる可能性があります。インプラント周囲炎は、進行すると骨が溶けてしまい、インプラントが脱落する原因になるため、術後のケアは非常に重要です。
5. 2か月間の過ごし方と注意点
2か月間噛むのを控える必要があると聞くと、「ずっと流動食を食べるしかないの?」と思うかもしれません。しかし、工夫次第で食事の選択肢は広がります。
① 柔らかい食事を心がける
硬い食べ物や粘着性のある食べ物を避け、次のような柔らかい食品を選びましょう。
- おかゆ や 雑炊
- スープ(具材を細かくする)
- ヨーグルト や プリン
- 豆腐
- 蒸し野菜(柔らかく煮たもの)
- 白身魚(ほぐして食べる)
また、術後すぐは 刺激の強い食べ物(辛いもの、熱すぎるもの、冷たすぎるもの) も避けるようにしましょう。
② 片側で噛まないようにする
もしインプラントを片側だけに埋入した場合、「反対側で噛めば大丈夫」と思うかもしれません。しかし、これも避けた方が良いです。
理由は、 無意識のうちにインプラント側にも力がかかってしまう可能性がある からです。特に、強く噛むと顎の筋肉や骨全体に負荷がかかり、インプラントの安定性に悪影響を及ぼします。
③ しっかりと口腔ケアをする
インプラント周囲炎を防ぐためにも、毎日の口腔ケアは欠かせません。ただし、術後すぐは傷口がデリケートなため、通常の歯磨きとは異なる方法を心がけましょう。
- 歯ブラシはやわらかいものを使用する
- インプラント部位には直接触れず、周囲を優しく磨く
- 歯科医師の指示がある場合は、抗菌性の洗口液を使用する
特に、 術後の検診 には必ず行くようにしましょう。
まとめ
インプラントを埋入した後の2か月間は、骨とインプラントがしっかりと結合するための大切な期間です。
- オッセオインテグレーションのために時間が必要
- インプラントの安定性を保つために噛まない
- 骨の治癒を妨げないようにする
- インプラント周囲炎のリスクを避ける
この期間に無理をして噛んでしまうと、せっかくのインプラントが失敗してしまう可能性もあります。
焦らずしっかりと回復期間を設けることで、 長く快適に使えるインプラント を手に入れることができます。歯科医師の指示を守り、2か月間は慎重に過ごしましょう!