多くの歯科医院で導入されているのは2ピースインプラントだと思いますが、1ピースインプラントを多く行なっている先生もいます。 患者さんの中には違いがわからず、どちらが良いのか迷うこともあると思います。 今回は違いについて解説します。
〇1ピースインプラントと2ピースインプラントとは?
インプラント治療はもはや珍しい治療方法ではありませんが、治療方法や材料が沢山あるので患者さんが戸惑うことが多いと思います。 インプラント治療において使う材料によって1ピースと2ピースに分かれています。 どのように違うかを確認しましょう。
●1ピースインプラントとは
インプラントの基本構造として、
①顎に入れるネジ(インプラント体)
②インプラント体と被せ物の中間にあり土台の様な役割をするアバットメント
③上部構造(上物・被せ物)
に分けることができます。
1ピースタイプのインプラントは①と②が独立せずに、1つになっているものを指します。 インプラント体とアバットメントは切り離すことはできません。
●2ピースインプラントとは
2ピースインプラントはインプラント体とアバットメントが独立しています。 基本的にそれらはネジで固定されているので、ネジを緩ませればそれぞれ切り離すことが可能です。 今日では2ピースタイプインプラントが主流です。
●1回法と2回法による選択
1ピースと2ピースの構造の違いはわかったと思いますが、構造の違いによって手術方法にも違いが出てきます。 1ピースの場合にはアバットメントが一体となっているので、手術回数が1度の1回法しか選択できません。 2ピースは1回法と2回法のどちらも選択が可能です。 手術回数は1回のみの方が良いと患者さんは思いますが、2回法にも利点があります。 2回法では1回目の手術時にインプラント体を歯茎で覆い、インプラント体が骨と結合するまで待機させることができます。 初期の感染の恐れがある場合や初期固定(インプラント体を入れる手術の際に得られる物理的な保持)が得られにくい状態などには2回法を選択する方が無難です。
〇1ピースインプラントの利点と欠点
1ピースと2ピースの形態の違いや手術方法の違いによる使用器材の選択があることを確認した上で、利点と欠点を確認しましょう。
●1ピースインプラントの利点
1ピースインプラントの利点は
①1回法の選択肢しかないので手術回数が少ない
②2ピースのものと比べ部品数が少なく一般的に低コストになる
③インプラント体とアバットメントが直接結合しておりネジの緩みなどはない
①は前述の通り1ピースインプラントは1回法しか選択することができません。手術回数が2回行わなくて済むという点では、メリットと言えるでしょう。
②は2ピースタイプと比較した場合には使用する部品が少なく済みます。1ピースと2ピースを比較した場合には安価になることが多いです。
③は部品の個数が多くなればそれぞれを結合させるために、ネジやセメントが必要になります。元々1体型である1ピースの物はネジの緩みやセメントの劣化などの心配はありません。
●1ピースインプラントの欠点
①上部構造の自由度が低い
②感染リスクがやや高い
③トラブル時に対応しにくい
①は1ピースにおいて重要な欠点と言えるでしょう。 最終的な上部構造はその軸をアバットメントで少し調整することが可能です。 前歯において唇側や口蓋側に少し傾斜させたいと思ってもアバットメントが一体になっている場合にはその直線上で上部構造を入れざるを得ません。 1ピースの場合は上部構造の角度などが変えにくいといえます。
②は1回法を選択せざるを得ないが故の欠点です。 インプラントを入れた直後は骨とネジが物理的に固定されますが、徐々にネジと骨とが結合していきます。 その最中にアバットメントが歯茎から露出しているので刺激になり感染や炎症のリスクがやや高くなります。
③に関しては特に今後高齢になるにつれてインプラントを入れている患者さんが自身で口の管理ができなくなる場合に注意が必要です。 例えば2ピースでネジ固定されていた場合にはネジを緩めれば上部構造とアバットメントを取り外すことができ、歯茎の下に隠しておくことが可能です。 しかし、1ピースの場合には取り外しが可能な部位は上部構造だけなので、アバットメントが歯茎から露出した状態を維持してしまいます。 その部位に汚れが停滞すれば、歯周炎など炎症のリスクが出てしまいます。 そういった場合には最悪インプラント体を取り除く必要が出てくることも考えられます。
〇2ピースインプラントの利点と欠点
●2ピースインプラントの利点
2ピースインプラントの利点は
①適用範囲が広い
②上部構造の自由度が高い
①に関しては骨が少ない場合やインプラントを入れることが骨の状態によって限られる場合にも1ピースの場合と比べて適応できる場合が多いです。
②はアバットメントにより角度の補正が可能となるため、上部構造の位置や角度についてはある程度変えることが可能となります。 また、手術方法は1回法が可能なこともあるので1ピースの利点を補うことも状態によってはあり得ます。
●2ピースインプラントの欠点
①2回法の場合には手術が2回必要になる
②部品が多くなるため1ピースと比べて費用がかかる
③インプラント体とアバットメントを結合するネジが緩むことがある
①は2回法を選択した場合に起こる欠点です。 1回法の選択も2ピースは可能ですし、2回法をあえて選択する場合もあります。 欠点とは言いにくいかもしれません。
②は2ピースは部品がそれぞれ独立しているので、結合させるネジなどが必要となります。 そのため費用が1ピースのものと比べて高くなりがちです。
③はネジを使用するので経年的に緩むことがあります。 その際には再びネジを締め直して対応可能です。
比較すると2ピースは費用がかかる点以外は明らかな欠点はなく、自由度が高いです。 そのため導入している歯科医院が多く主流となっています。
〇まとめ
1ピースと2ピースのインプラントについて基本を確認しました。構造の違いやそれに伴う手術の適応が異なることがわかったと思います。 利点と欠点はそれぞれにあるので、どちらを選択するべきかは歯科医師に相談しましょう。 インプラント治療は高額な治療になるのでどうしても費用に目が向きがちですが、骨の状態や噛み合わせの状態などから個人に合ったインプラントの選択をする様にしましょう。