最近では珍しくなりましたが、乳歯の虫歯を放置している方が時々います。            乳歯は生え変わるから放っておいてもいいと思うのかもしれません。               痛みが出た時に治療を行えば良いという考えなのかもしれません。                しかし、永久歯に影響が出ることがあります。                         子供の歯の治療の必要性を訴えて、受診を促すようにしています。

〇乳歯と永久歯の違い

乳歯が生えている時期は6ヶ月ほどから始まり、                         最終的に全て乳歯がなくなるのは11歳ごろです。                            計20本の乳歯があります。                                   乳歯が生えている時期は歯周炎の心配はあまりありませんが、                     虫歯にはなります。                                          乳歯の虫歯治療の重要性を簡単に表すと、

①永久歯への影響

②永久歯の歯並びの影響

これらがあるために行います。

乳歯の虫歯治療の必要性について確認する前に、乳歯と永久歯の違いをまずは確認しましょう。

●乳歯の構造

乳歯は永久歯と構造上は同じです。                              しかし、永久歯と比べて以下の特徴があります。

・エナメル質や象牙質の厚みが薄い

・石灰化度が低く虫歯になりやすい(酸に弱い)

・歯髄が大きく、張り出している

歯の表面はエナメル質で覆われ、内側に象牙質、歯髄(神経)が存在します。           構造上の違いとしては永久歯と比べてそれぞれの厚みが薄いことが言えます。           また石灰化度も低く虫歯の菌が作る酸に弱いことが知られています。               歯髄も大きく張り出しており、虫歯が進行すると歯髄に早く到達してしまう可能性があります。   乳歯は虫歯になりやすく、虫歯になってしまうと進行が早いです。                虫歯は速やかに進行し、神経を取る治療になってしまいやすいことを意味しています。

●乳歯の見た目

乳歯と永久歯が同時に混在する7歳ごろになると、                        永久歯の色と乳歯の色に差があり、                              驚く保護者の方がいます。                                   永久歯は黄色みがかった色をしているのに対して、乳歯は白色や青白色です。           したがって、乳歯は永久歯よりもかなり白いことを知っておきましょう。             また、乳歯が生えている時に特徴的なものは歯と歯の間にある隙間です。             専門的には部位によって霊長空隙、発育空隙と言います。                    永久歯には一般的にはないものです。                             乳歯は永久歯の大きさよりも小さいですが、                          この空隙を利用することにより、                               大人の歯が生えるスペースを作っています。                          スペースが小さい場合やない場合には、                            後に綺麗な歯並びになりにくい可能性があります。

〇乳歯の虫歯治療

乳歯と永久歯の違いを簡単に理解した上で、治療の違いを確認しましょう。            乳歯と永久歯の治療の違いは大きくはありません。                       乳歯の虫歯治療は今後生え変わる大人の歯にも影響を及ぼすことがあるので重要です。

●乳歯の虫歯治療

乳歯の虫歯の治療法としては大きく分けて3通り

・詰める処置(レジン充填・セメント充填・インレー)

・一部神経を取る治療(断髄)

・全部神経を取る治療(抜髄・感染根管治療)

が挙げられます。それぞれを確認しましょう。

●乳歯の虫歯治療 詰める処置

詰める処置は永久歯でも行われる処置です。                          一般的には小さい虫歯に対して行われます。                          虫歯の部位を削り詰める処置が行われます。                           虫歯の面が広い場合には歯型をとり、作った物を詰める処置が行われます。            永久歯でも行われる治療です。                                しかし、低年齢時にはこのような治療が難しいことがあります。                 その場合には虫歯の進行止めを塗布することもあります。

●乳歯の虫歯治療 一部神経を取る治療

永久歯の時には一般的ではないかもしれませんが、                       乳歯の場合には断髄という処置が行われることがあります。                     歯を頭と根の部位に分けるとすると、                             歯の頭に相当する部位の神経だけを取り除き、根の神経を残す方法です。             適応は限られますが、神経を一部残すことにより歯を削る量や歯髄を保存することができるため、  その歯を長く保つことが可能となります。

●乳歯の虫歯治療 全部神経を取る治療

乳歯の場合にも永久歯の場合にも行われる治療です。                      基本的には症状が強い歯や虫歯がひどい場合に対して適応となります。              虫歯が進行すると無症状でも歯の根の先に化膿巣を作ることがあります。             乳歯の場合は根の先に永久歯が存在します。                          化膿巣が原因となり、永久歯の形態不全や石灰化不全が起こることがあります。

〇乳歯を抜歯する場合

乳歯は可能な限り残し、大人の歯が生え変わる時まで残しておくことが一般的です。        乳歯は永久歯が生えるスペースを確保してくれる役割があるためです。              しかし、時として早く抜歯をすることがあります。

・乳歯の虫歯がとても大きい時

・乳歯の根尖病巣が大きい時

・大人の歯が違う場所から生えて来た時

頻度が多いものとしてこれらが挙げられます。

乳歯は永久歯が生えてくる適切な時期まで残しておくことが基本ですが、             場合によってはそれより前に抜歯をすべき時があります。                    例に挙げたものは乳歯を残しておくことにより、永久歯に悪影響を及ぼす可能性がある時です。   乳歯を早くに抜歯をしなくてはいけない場合には、前述の空隙がなくなる可能性があります。    空隙がなくなると永久歯が正しい位置に生え変わることができなくなってしまいます。       場合によっては保隙という治療を行います。

〇まとめ

乳歯は永久歯と比べて虫歯に弱く、                              いったん虫歯になると治療が簡単に終われなくなる可能性があります。              また、大きな虫歯は乳歯の後ろに控えている永久歯に悪影響を及ぼす可能性があります。      しっかりと治療をしておきましょう。                             仮に乳歯を早く抜歯することになってしまった場合には、                    永久歯を正しい位置に誘導するようにスペースを確保する必要があります。            乳歯だからといって治療をしないという選択は将来にも響くので十分に注意をしましょう。     大きな治療になる前にしっかりと定期検診などを行いたいものです。