近年、歯科治療において「CAD/CAM冠(キャドキャム冠)」が普及しています。特に、2020年頃に日本の健康保険適用が開始されて以降、多くの患者が選択するようになりました。CAD/CAM冠は、金属を使用しない白い被せ物(クラウン)であり、審美性や金属アレルギーのリスク軽減などのメリットがあります。しかし、その一方で「割れやすい」「適合性が悪い」「耐久性に問題がある」といったデメリットや危険性も指摘されています。

本記事では、CAD/CAM冠の特徴とともに、その危険性について詳しく解説していきます。


1. CAD/CAM冠とは?

CAD/CAM冠は、「Computer-Aided Design / Computer-Aided Manufacturing」の略で、コンピュータ制御により設計・製作される歯科用クラウンのことを指します。従来のクラウン(メタルクラウンやセラミッククラウン)とは異なり、歯科医院または歯科技工所で専用のスキャナーやミリングマシンを使用して作製されます。

CAD/CAM冠の特徴

  • 金属を使用しない(メタルフリー):金属アレルギーの心配がない
  • 保険適用が可能:従来のセラミックよりも安価で提供できる
  • 短期間で作製可能:コンピュータ制御により迅速に製作できる
  • 白い見た目で審美性が高い:銀歯より自然な仕上がり

しかし、これらのメリットの裏には、いくつかのリスクやデメリットも存在します。


2. CAD/CAM冠の危険性とデメリット

(1) 割れやすい・欠けやすい

CAD/CAM冠は、ハイブリッドレジンと呼ばれる素材で作られています。これは、樹脂(プラスチック)とセラミックを混ぜたものですが、純粋なセラミックや金属と比べると強度が劣ります。そのため、強い力がかかると割れやすく、欠けやすいという問題があります。

特に、奥歯(臼歯)に使用すると、強い噛み合わせの力で割れるリスクが高まるため、慎重な選択が必要です。

(2) 適合性が悪い

従来の金属製クラウンやセラミッククラウンに比べ、CAD/CAM冠は歯との適合性がやや劣るとされています。歯との隙間が生じることで、以下のような問題が起こる可能性があります。

  • 虫歯の再発(2次カリエス):隙間に細菌が入り込み、虫歯が再発しやすい
  • 歯周病のリスク増加:適合が悪いとプラークが溜まりやすく、歯周病を招く

特に、保険適用のCAD/CAM冠は、使用できる素材や作製方法に制限があるため、自由診療のセラミック冠と比べて適合性が劣るケースが多いです。

(3) 長期耐久性に不安がある

一般的に、金属冠やセラミック冠は10~20年以上の耐久性が期待できます。しかし、CAD/CAM冠の耐久性は5~7年程度とされており、長期間の使用には向かないというデメリットがあります。

特に、食いしばりや歯ぎしりのある人はCAD/CAM冠が早期に破損する可能性が高いため、慎重に選ぶ必要があります。

(4) 変色しやすい

CAD/CAM冠の材料であるハイブリッドレジンは、経年劣化による変色や摩耗が起こりやすいという特徴があります。これは、天然歯やセラミックと比較して吸水性があるため、コーヒーやワイン、カレーなどの色素を吸収しやすいからです。

審美性を重視する人にとっては、CAD/CAM冠が時間とともに黄ばんでしまう可能性があることを理解しておく必要があります。

(5) 使用できる部位に制限がある

現在、健康保険で適用されるCAD/CAM冠は、すべての歯に使用できるわけではありません。適用範囲は**小臼歯(前から4番目と5番目の歯)**が基本であり、大臼歯(奥歯)は条件付きでの適用となっています。

そのため、すべての人がCAD/CAM冠を選択できるわけではなく、口腔内の状況によっては別の治療法を検討しなければならないケースもあります。


3. CAD/CAM冠を選ぶ際の注意点

CAD/CAM冠にはさまざまなメリットがある一方で、デメリットやリスクも存在します。治療を受ける前に、以下の点に注意しましょう。

噛み合わせの強さを確認する
→ 食いしばりや歯ぎしりがある場合は、CAD/CAM冠が割れるリスクが高いため、慎重に検討しましょう。

定期的に歯科医院でメンテナンスを受ける
→ 適合性の問題や2次カリエスのリスクを減らすため、定期的なチェックが必要です。

変色が気になる場合はセラミック冠も検討する
→ CAD/CAM冠は時間とともに黄ばむ可能性があるため、審美性を求める場合は自由診療のセラミック冠を検討しましょう。

使用できる部位を確認する
→ 健康保険適用の範囲が限られているため、自分の歯の状況を歯科医と相談することが重要です。


4. まとめ

CAD/CAM冠は、金属アレルギーを防ぎ、見た目が白いという大きなメリットがあります。しかし、その一方で強度の問題・適合性・耐久性・変色・使用部位の制限などのデメリットやリスクがあることも理解しておく必要があります。

特に、噛み合わせが強い人や審美性を重視する人は、自由診療のジルコニア冠のほうが適している場合があります。歯科医と相談しながら、自分にとって最適な治療方法を選びましょう。

CAD/CAM冠を選ぶ際は、そのメリットとデメリットをしっかり理解し、後悔のない治療を受けることが大切です。