こんにちは

入れ歯がピッタリとフィットする条件はいろいろあります。

そのひとつが入れ歯の”噛み合わせ”です。

入れ歯の噛み合わせがよくないと、入れ歯にさまざまな不具合が生じます。

入れ歯に適切な噛み合わせを与えられるかは、入れ歯の型取りと同じくらいとても大切です。

ところが困ったことに入れ歯の正確な”噛み合わせ”は、入れ歯の型取りと同じくらい、もしかしたらそれ以上にとても難しいです。

今回は、入れ歯作りにおける”噛み合わせ”の難しさについてお話しします。

〇歯科治療で重視される中心咬合

入れ歯の噛み合わせを考える前に、歯がある状態での噛み合わせを考えてみようと思います。

そこでカギとなるのが中心咬合です。

●中心咬合とは

上下の歯が、最大面積でしっかりと噛み合った噛み合わせです。

最も効率よく食べ物を噛める噛み合わせといえます。

歯がたくさんそろっている方ほど、中心咬合は安定しています。

●中心咬合位

中心咬合が成立しているときの下顎の位置を中心咬合位と言います。

中心咬合位では、顎関節内で下顎骨の頂上部分である下顎頭は、最も安定した位置になると考えられています。

安定した位置とは、顎に過度な負担がかからず、顎の骨が最も楽な位置という意味です。

●歯科治療で重視される中心咬合

虫歯治療や入れ歯治療の結果、下顎の位置がずれてしまっては、顎関節症などになりかねません。

そこで、下顎の位置が中心咬合位になるよう、噛み合わせを合わせていくわけですが、顎関節内での下顎骨の位置関係は外からは見えません。

中心咬合できる噛み合わせなら、そのときの下顎骨は中心咬合位にあるはずです。

中心咬合を目指して治療を進める理由は、顎に負担をかけない位置、すなわち中心咬合位を求めるためでもあるわけです。

〇中心咬合や中心咬合位は不安定

困ったことに、中心咬合や中心咬合位はとても不安定です。

●下顎の位置そのものが不安定

実は下顎の骨は、どこかの骨とくっついているわけではなく、筋肉や靭帯によって頭蓋骨から(ブランコのように)ぶら下がっている状態にあります。

すなわち、下顎骨の位置はとても不安定なのです。

中心咬合位も、たくさん歯が残っている状態なら、比較的わかりやすいのですが、歯の数が減るにつれて、わかりにくくなっていきます。

●歯の数の減少で不明瞭になる中心咬合

歯を失って、そのまましばらく放置していると、失われた歯の隣の歯が寄ってきたり、噛み合わせている歯が伸びてきたりします。

つまり、歯の本来の位置が少しずつずれていきます。

また、歯をたくさん失うと、どの位置で最もよく噛めるのか、すなわち中心咬合も分かりにくくなります。

中心咬合は、歯の本数の減少とともに分かりにくくなっていく不安定な噛み合わせともいえます。

〇入れ歯治療での噛み合わせが難しい理由

入れ歯治療での噛み合わせが難しい理由は、まさに中心咬合の不安定さにあります。

●虫歯治療では中心咬合は分かりやすい

虫歯治療では、中心咬合時にしっかりと噛めることを目標に歯を治します。

つまり、虫歯で失われた噛み合わせを、虫歯になる元の状態に戻そうとするわけです。

中心咬合は不安定と言いながらも、1~2本程度の少ない虫歯なら、比較的簡単に戻せます。

ブリッジのような大きな被せ物であっても、比較的たくさん歯が残っている方なら、中心咬合を歪めることなく、比較的スムーズに理想的な噛み合わせを得られます。

●入れ歯治療では中心咬合が不明瞭になっている

虫歯治療と異なり、入れ歯治療で中心咬合を得るのはとても難しいです。

小さな部分入れ歯なら、歯が残されている分、まだ中心咬合を求めやすいです。

ところが、総入れ歯や総入れ歯に近いくらい大きな部分入れ歯となりますと、そうはいきません。

歯がまったくない、もしくはほとんどないわけですから、上顎と下顎の間の垂直的な幅、下顎の骨の上顎に対する前後的な位置、左右的な位置、全てわからなくなっています。

しかも、歯がなくなると顎の骨も痩せて細くなり、本来の形ではなくなっていきます。

入れ歯治療では、中心咬合そのものがとても分かりにくくなっているのです。

もともと入れ歯が入っている患者さんでは旧義歯が参考にできますが、

そもそもその中心咬合が間違っていたりすることもよくあります。

●入れ歯の中心咬合が本来のそれと同じとは限らない

では、歯が全くなくなった総入れ歯や、総入れ歯に近い部分入れ歯では、どのようにして中心咬合を求めるのでしょうか。

実は、中心交互を求める基準があります。

いろいろな基準があるのですが、それらは、あくまでも平均的な基準でしかありません。

人の体は、1人として同じ人はいません。

必ずどこかに違いがあります。

しかし、失われた中心咬合を回復させるために、新しく与えられた噛み合わせは、平均値から求められた中心咬合なのです。

ですから、入れ歯治療で設定した人工的な中心咬合が、歯が全てそろっていた頃の中心咬合とは異なっていてもおかしくありません。

入れ歯治療で噛み合わせが難しい理由は、まさにこの点にあるわけです。

〇噛み合わせが合っていないと、、、、

入れ歯の噛み合わせが合っていないと、どのような症状が現れるのでしょうか。

●噛めない

噛み合わせが合っていないと、当然ですが噛めません。

●痛む

噛み合わせのバランスが悪い場合、先に当たる部分を中心として、噛み合わせたときに痛みを感じるようになります。

●頬を噛む

噛み合わせが低い場合、頬を噛むことがあります。

●外れる

意外に思われるかもしれませんが、入れ歯が外れる原因のひとつが、合っていない噛み合わせです。

例えば、上顎の総入れ歯を作ったとします。

右側の噛み合わせが高く、左側の噛み合わせが低い場合、噛み合わせると右側が先に当たります。

すると、入れ歯が傾き、左側が歯肉から浮き上がり、入れ歯が外れてしまいます。

このように、噛み合わせは、入れ歯の安定感にも関係しています。

〇まとめ

今回は、入れ歯治療での”噛み合わせ”の難しさについてお話ししました。

入れ歯の噛み合わせが難しい理由は、

①中心咬合自体が不安定

②中心咬合が分かりにくくなっている

③入れ歯の人工的な中心咬合が本来の中心咬合と同じとは限らない

などです。

噛み合わせがうまくできていないと

①噛めない

②入れ歯が痛くなる

③頬を噛む

④入れ歯が外れる

などの症状が現れます。

これらは、一般的に入れ歯の不具合として挙げられる症状とほとんど同じです。

入れ歯の噛み合わせは、入れ歯治療を成功させるカギと言っても過言ではないでしょう。

しかし、入れ歯の噛み合わせは、とても難しいので、専門的な知識だけでは解決するのは難しく、長年の治療経験がとても重要となります。

当院には、噛み合わせを含めた入れ歯作りの専門的な知識、そして豊富な治療経験があります。

入れ歯でお困りの方は、当院に是非お越しください。