こんにちは

虫歯治療や歯周病治療を受けても、早い段階で効果が得られる場合もあれば、そうでないこともあります。

同じような治療を受けているのに、治療の効果に差が出るのはどうしてなのでしょうか。

今回は、歯科治療の効果に差が出る理由と、その対策についてお話しします。

〇治療の効果に差が出る理由

同じように治療しているのに治療の効果に差が出るのはどうしてなのでしょうか。

●人体の複雑さ

人の身体は同じように見えて、同じ人はいません。

極端な例を挙げると、とても稀ですが、見た目は普通でも、臓器が全て左右逆になっている人もいます。

人それぞれに体の構造は異なりますから、ひとりひとりに合わせた治療が必要となります。

歯やお口も同じです。

人体の構造の複雑さが、治療を困難にし、治療の結果に差が出る理由のひとつとなっています。

●歯の構造の複雑さ

歯の形の違いは、奥歯になればなるほど顕著になります。

例えば、大臼歯という奥歯になれば、歯の神経の数が3本の人もいれば、4本の人もいます。

しかも困ったことに、歯根の数と一致せず、レントゲン写真上歯根が3本だから歯の神経も3本かと思っていたら、4本だったということも珍しくありません。

しかも、歯の神経はとても細く、先の方が曲がっていることもあり、治療を一層、難しくしています。

例に出したのは、歯根や歯の神経の話でしたが、歯の構造の複雑さは抜歯にも関係しますし、被せ物や詰め物にも関係します。

このように、歯の構造が複雑であり、個人差の範囲が広いことも、治療の効果に影響します。

●お口の構造の複雑さ

一見すると歯ほど複雑に見えませんが、歯が複雑であるようにお口の構造も複雑です。

例えば、抜歯後の変化です。

歯を抜いてしばらく経つと、歯肉や骨が再生しますが、再生したあとの状態は、人によって違います。

入れ歯の作り方自体は、どこで作っても同じなのですが、入れ歯がしっくりくるかこないかは、歯を抜いた後の治り方の差の影響を強く受けます。

インプラント治療も同じです。

お口の構造の複雑さも、治療の効果に大きく関係しています。

●癖の違い

人にはそれぞれ癖があります。

歯やお口に関係する癖としては、噛み方の癖、歯の磨き方の癖、舌の癖、指や爪を噛む癖などいろいろな癖があります。

癖も治療の効果にとても影響しています。

例えば、歯ぎしりや食いしばりといった噛み合わせの癖があると、治療中の歯にヒビが入ったり、歯周組織が傷んで歯周病治療が難しくなったりします。

舌の癖があると、矯正治療をしても歯並びがきれいに整えにくくなります。

しかも困ったことに、癖は本人に自覚がないことも多く、癖を治すのもご本人の努力次第です。

癖の違いも、治療の効果を左右する重要な要素です。

●感覚の違い

痛みの感じ方は、人それぞれ異なります。

例えば、抜歯の際、とても簡単に抜けたとしても、痛みがとても強く、長引く方もいらっしゃいますし、とてもたいへんな抜歯だったのに、全く痛くないという方もおられます。

歯の神経も同じで、虫歯治療で詰め物をした後痛みが続く方もいらっしゃいますし、全く痛くない方もいらっしゃいます。

これらは痛みの例でしたが、同じように治療しても、治療後に、その歯がどのように感じるのか、人によって異なるわけです。

したがって、治療の効果が出ていても、そう感じてもらえないことも考えられ、治療後の感じ方の違いも、治療の効果に関係する要素のひとつといえます。

〇治療を成功させるポイント

では、歯科治療を成功させるためにはどうすればいいのでしょうか。

●インフォームドコンセント

先ほどお話しした通り、歯やお口の構造はとても複雑です。

歯科医師側が、歯やお口の構造が複雑であり、個人差が大きいことを前提とした治療計画を立て、治療に伴うリスクなどをあらかじめ説明しておきます。

それらに納得していただき、同意を得た上で治療を始めます。

これが、インフォームドコンセントです。

治療開始後のトラブルを防ぐためにも、治療前に、十分なインフォームドコンセントを行うことはとても大切です。

インフォームドコンセントは、歯科治療だけでなく、医療行為全てに欠かせない重要なポイントといえます。

●信頼関係の構築

2番目になりましたが、実は最も大切なことが、この歯科医師側と患者さん側との信頼関係を築き上げることです。

治療に伴うリスクを全て説明できれば理想的ですが、かなり低い確率で起こるかもしれない嫌な事柄まですべて余すところなく説明することは、現実問題としてとても難しいです。

もし、残念ながら、説明していない嫌なことが治療後に起こったとき、信頼関係があれば、そちらへの対応もしやすくなります。

しかし、歯科医師を信頼してもらえていなかったら、トラブルが拡大するだけです。

患者さんから信じてもらうことは、治療を成功させる要です。

●相性

歯科医師と患者さんも、人と人。

相性というのは必ずあります。

合わない人とはなかなか合わないように、相性が良くないと残念ながら治療もなかなか進められません。

〇まとめ

今回は、歯科治療に効果の差が出る理由と、治療を成功させるためのポイントについてお話ししました。

治療の効果に差が出る理由は、歯やお口の構造の複雑さや癖、感覚の違いなど、条件の違いです。

このため、治療を進める上で重要になるのが、人体構造の複雑さや性格などを前提を考慮した治療計画と、患者さんからの信頼です。

信頼が重要なのは、事前に全てを完璧に説明することは限られた診療時間の中ではとても困難で、事前説明にないことが起こる可能性がゼロではないからです。

もし、事前説明にないことが起こり、それに対しての不信感が募るばかりなのなら、医院を変えた方がいいかもしれないくらい、信頼というものは重要です。

歯科医師も万能ではありません。

どれだけ経験を積んでも、何年しか医療に携わってきても、初めての症状に出会うことはあります。

そんなときでも、歯科医師は患者さんのために全力で治療に取り組みます

ですので、受診なさった患者さんもできるだけ信頼で応えるようにしてもらえるとありがたいです。