乳歯の晩期残存は時々見かけることがあります。                        永久歯がある場合もありますが、先天欠如していることもあり永久歯代行としてそのままの場合もあります。                                           一般の方には驚かれる内容かもしれないので知識として知っていただき、             仮に抜歯等になった際の処置などを確認していたいです。

〇乳歯晩期残存って何?

乳歯は個人差がありますが11歳くらいで、奥の乳歯が抜けて全て永久歯に代わっていくことが多いです。                                            しかし、中には乳歯がそのまま残っていることがあります。                   これを乳歯晩期残存と言います。                                 晩期残存の場合には、永久歯があるのか無いのかを確認します。                  状況によって治療が必要なのかそのまま経過観察をするのかを歯科医院で確認しておいた方が良いでしょう。

●乳歯晩期残存の特徴

乳歯晩期残存は下顎の奥の乳歯に多くみられます。                       永久歯が先天的にない場合(先天欠如)にはその歯を大人の歯と同じ様に扱い、残せるだけ残す様にします。                                           永久歯と異なり、歯自体の厚みが薄く根も短いです(構造は乳歯と同じ)。                        歯自体の厚みが薄く根も短いです。                              虫歯になると進行が早く、歯周病になると早く揺れてくることが予想されます。          永久歯がある場合には、その人の年齢にもよりますが、大人の歯が生えてくるまで経過観察する場合もあります。                                         中には歯並びの悪化が起こることもあるので、場合によってあまり揺れていなくても抜歯を行い、適正な位置に永久歯が生えてくるように誘導することもあります。

●乳歯晩期残存の原因

乳歯晩期残存の原因はいくつかありますが、最も多い原因は永久歯がないことによるものです。   本来であれば、顎の骨の中に永久歯の「種」の様なものがあるのですが、先天的にないことがあります。                                            その他に、永久歯があっても発育が上手くいっていない場合や本来と違う場所に生えようとしている場合、乳歯の歯根がうまく吸収されていない場合も考えられます。                 中には歯が余計に存在する過剰歯が原因になることや、                       稀ですが顎の中の腫瘍や嚢胞が原因していることもあります。                                        親族に歯の本数が少ない方や先天的に永久歯が無い方がいる場合には先天欠如の傾向があります。

〇永久歯代行の乳歯の治療

乳歯​晩期残存があった場合には、状況や年齢によって処置や治療方針が変わってきます。      乳歯晩期残存があり、永久歯がない場合には乳歯を永久歯とみなします(永久歯代行)。      問題はその歯に虫歯や歯周病が起きてしまった場合です。                    乳歯なので永久歯と比べて弱さがあります。

●永久歯代行の乳歯の治療 虫歯の場合

先天欠如がある乳歯において、虫歯が生じた場合には速やかに処置が必要です。          永久歯と同様に虫歯を削って詰める処置や虫歯の大きさによっては神経を取る処置を行います。   初期の虫歯であれば良いのですが、神経を取る処置になった場合には残すことが難しくなってしまうことがあります。                                       神経を取るような大きな虫歯では歯を削ると歯の質と量が大きく損なわれ、詰める処置や冠を被せる処置ができない状態になることがあります。                           また、神経の治療がうまく奏功しないこともあります。その様な場合には抜歯を選択することがあります。                                            乳歯の場合には特に虫歯が進行しないように注意が必要です。

●永久歯代行の乳歯の治療 歯周病の場合

歯周病は歯肉炎と歯周炎に分類されます。                           歯肉炎の場合には歯周炎に移行しない限りそこまで心配は要りません。              しかし、歯周炎になってしまうと乳歯は歯根が短いため、歯の揺れが永久歯と比べて早く起きてしまいます。                                           一度揺れ始めると、揺れを抑えることが難しくなります。                    乳歯の手前と奥の歯で連結して固定する場合もありますが、揺れがひどい場合には抜歯をすることもあります。                                          また、歯周病でなくても何らかの理由で歯根が短くなり、揺れてしまうこともあります。       歯根が短くなってしまう時にも抜歯を行う頻度は高くなります。

一般的には30代から40代で虫歯や歯周病などの原因で乳歯が抜ける、または抜歯をする場合が多いと思われます。

〇永久歯代行の乳歯が亡くなった場合の治療

何らかの理由で永久歯代行乳歯を失った場合には、そこを補う治療が必要になります。       一般的に永久歯を抜歯した場合と同じ治療が行われます。

①入れ歯

②ブリッジ

③インプラント

が挙げられます。

何もしないという選択もあります。                              しかし、抜いた前後の歯や咬んでいた歯が動いてしまい噛み合わせに不具合を生じることや、    歯並びが変わり歯列不正が起こる可能性が高くなります。                    お勧めできない選択です。

●乳歯が亡くなった場合の治療 インプラントの利点

乳歯が抜けてしまった場合の治療の選択肢として、インプラントは悪い治療ではありません。    乳歯は永久歯がきちんと生えるスペースが確保できるように歯の幅が広い形態になっています。    乳歯だった部位のインプラントを入れるスペースが確保されている可能性が高いです。       また、感染等の悪条件がなければ抜歯後は比較的早くインプラント治療に移行することが可能です。  抜歯をしたとしても歯根が短いため大きな穴になりにくいためです。

〇まとめ

乳歯晩期残存について理解ができたでしょうか。                        単に歯が生えてこないだけで永久歯が存在することもあれば、先天的に永久歯がないことがあります。生え変わりが遅い場合などは一度確認してみることをお勧めします。               先天欠如であった場合には可能な限り残せるように、虫歯や歯周病にならないように日頃から細心の注意が必要です。                                        仮に乳歯を失った場合、抜歯を余儀なくすることになった場合でもその後の治療法はあります。     気になる場合には早めに歯科受診をしましょう。