こんにちは

虫歯や歯周病が歯やお口に生じる病気であることはみなさんご存知でしょう。

ところが、虫歯や歯周病が原因となってお肌の病気を引き起こしていると聞くと驚かれる方も多いのではないでしょうか。

虫歯や歯周病が関係すると考えられているお肌の病気に掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)という病気があります。

掌蹠膿疱症とは、どのような病気なのでしょうか。

そして、どうして虫歯や歯周病が関係しているのでしょうか。

今回は、掌蹠膿疱症に対する虫歯や歯周病治療の効果などについてお話しします。

〇掌蹠膿疱症とは

掌蹠膿疱症とは一体どのような病気なのでしょうか。

●掌蹠膿疱症とは

掌蹠膿疱症とは、なかなか聞きなれない難しい言葉ですね。

”掌”は手のひら、”蹠”は足の裏を意味する漢字です。

膿疱とは、中に膿がたまった水ぶくれのことです。

すなわち、掌蹠膿疱症とは、手のひらや足の裏に膿疱ができる病気です。

困ったことに、膿疱は良くなったり、再発したりを何度も繰り返します。

膿は普通、菌が入ってできるものですが、掌蹠膿疱症の膿はそうではないのが特徴です。

●原因

今のところ、掌蹠膿疱症の原因は特定されていません。

●症状

まず最初は、左右の手のひらや足の裏にたくさんの小さな水ぶくれが急に現れます。

しばらくすると、水ぶくれが膿疱に変わります。

そして、膿疱が潰れてガサガサしたかさぶたになって治るのですが、これを何回も繰り返します。

40~50歳代に生じやすい病気ですが、中には20~30代という若い方での発症例も知られています。

●治療法

掌蹠膿疱症の治療は、原因がよくわかっていないこともあり、ステロイドなどの塗り薬による対症療法が中心となっています。

塗り薬による治療は、症状が強い場合は強めのステロイド軟膏から始まります。

そして、症状が改善するにつれて少しずつ弱いステロイド軟膏やビタミン軟膏に変えていきます。

塗り薬で治らない場合は、紫外線療法やビタミン剤などの飲み薬の処方も選ばれます。

〇掌蹠膿疱症と歯科との関係

●虫歯や歯周病がきっかけ

実は掌蹠膿疱症の方のうち、一定の割合で虫歯や歯周病になっている方がいます。

それも、軽い虫歯や歯周病ではなく、根の先に膿がたまっていたり、歯肉やその周辺が膿んで腫れているような進行した虫歯や歯周病です。

また、歯科の病気ではありませんが、掌蹠膿疱症の方の中には扁桃腺が腫れている方もいらっしゃいます。

前述しましたように、掌蹠膿疱症の膿には菌はいないのですが、お口や喉の付近に膿がたまるような病巣のある方に生じる傾向が認められます。

確かに、虫歯や歯周病を放置している方がすべて掌蹠膿疱症になるわけではありません。

ですが、歯やお口周辺の病巣のある方に生じる傾向があることから、虫歯や歯周病などが掌蹠膿疱症を引き起こすきっかけになっているのではないかと考えられています。

●金属アレルギーも関係

金属アレルギーは、金属に対するアレルギー反応で、お口の粘膜やお肌に皮膚炎を起こします。

掌蹠膿疱症の方の中で金属アレルギーを示す方がおられます。

現在の歯科治療ではさまざまな金属材料を用いていることから、歯科治療で使っている金属材料に対する金属アレルギーが関係している可能性も指摘されています。

〇掌蹠膿疱症に対する歯科治療

掌蹠膿疱症の原因はよくわかっていないため、現在は対症療法が中心です。

ですが、もし、掌蹠膿疱症を引き起こすような歯科疾患があるなら、それを取り除くことも必要です。

●虫歯治療

虫歯が進行すると、やがて歯の神経に虫歯菌が至ります。

すると、歯の神経が壊死し、歯の根の先に膿がたまるようになります。

この膿が掌蹠膿疱症と関係があるのではないかと疑われています。

そこで、歯科では歯の神経が収まっていた根管という部分から消毒の薬を浸透させていく根管治療で膿の部分を治療し、掌蹠膿疱症の改善を図ります。

●歯周病治療

歯周病は、歯肉や歯槽骨(歯の周囲の骨)など歯を支えている歯周組織に生じる病気です。

歯肉の腫れや出血などに始まり、やがて骨が吸収されて減ってくると、歯がぐらぐらと動き始め抜けてしまいます。

こうした歯周病の進行の過程で、歯周組織に膿がたまることがあります。

この歯周病の膿と掌蹠膿疱症の関係性が疑われています。

掌蹠膿疱症の方で歯周病を認める場合は、歯周病治療により症状の改善を目指します。

●金属アレルギー

歯科用金属材料に金属アレルギーがある方に対しては、その金属材料を使った詰め物や被せ物を外して、それ以外の材質の詰め物や被せ物に置き換える治療を行います。

具体的には、コンポジットレジンというプラスチック系の歯科材料か、セラミック系の歯科材料を使った詰め物や被せ物です。

金属アレルギーの方に対しては、歯科はアレルギー反応を示す治療材料をそうでないものに置き換えることで、症状を改善させるようにします。

〇まとめ

今回は、掌蹠膿疱症と歯科治療についてお話ししました。

掌蹠膿疱症は原因不明の病気ですが、歯科領域の病気が発症に関係していると考えられています。

ただし、歯科領域の病巣を治療しても、掌蹠膿疱症の症状が改善するまで数ヶ月から1~2年ほどかかると言われています。

確かに時間はかかりますが、症状の改善が認められることから、適切な歯科治療が掌蹠膿疱症の症状改善に有効であると考えられます。

掌蹠膿疱症と歯科疾患の関係性を直接調べる方法は今のところありませんが、歯科治療による症状改善は有効な治療法のひとつと言えそうです。

掌蹠膿疱症と診断されたら、一度歯科医院で虫歯や歯周病の有無などを調べてもらうことをおすすめします。