こんにちは
蓄膿症で悩んだ経験ありますか?
蓄膿症というと、鼻の病気=耳鼻咽喉科の病気というイメージがあると思いますが、実は歯性上顎洞炎という歯に関係する蓄膿症もあります。
歯がどうして蓄膿症という鼻の病気と関係があるのかと不思議に思う方もいらっしゃることでしょう。
そこで今回は、歯に関係する蓄膿症、歯性上顎洞炎についてご紹介します。
〇歯性上顎洞炎とは
まず最初に、歯性上顎洞炎がどういう病気なのかについて解説します。
●上顎洞炎とは
上顎洞炎とは、一般的には蓄膿症として知られる病気です。
上顎洞は、副鼻腔という頭の骨にある空洞のひとつです。
余談ですが、副鼻腔は4つあり、上顎洞のほか、篩骨洞、前頭洞、蝶形骨洞です。
副鼻腔に起こる炎症ということで副鼻腔炎ともよばれます。
上顎洞炎は、細菌が上顎洞に入り込んで起こる病気です。
簡単にいうと上顎洞が化膿した病気ということになります。
●歯性上顎洞炎とは
”歯性”とは、歯に原因があるという意味の言葉です。
”上顎洞炎”の前にわざわざ”歯性”という言葉がついている理由は、細菌が入り込むルートが、鼻と歯の2種類あるからです。
上顎洞に細菌が入り込んだルートが歯からですと歯性上顎洞炎となり、鼻からですと(鼻性)上顎洞炎となります。
なお、鼻性上顎洞炎は、単に上顎洞炎、もしくは副鼻腔炎とよぶケースが大半です。
すなわち、歯性上顎洞炎は、2種類ある上顎洞炎(蓄膿症)のひとつというわけです。
●歯性上顎洞炎をおこしやすい歯
実は全ての歯が歯性上顎洞炎を起こすというわけではなく、歯性上顎洞炎を起こしやすい歯は限られています。
最も多いのが、上顎の第一大臼歯という前から数えて6番目の歯です。
その理由は、上顎の第一大臼歯のあたりで上顎洞の底が深くなっているからです。
続いて多いのは、上顎の第一大臼歯の前後の歯です。
上顎の前歯や下顎の歯が歯性上顎洞炎の原因になることはありません。
〇歯性上顎洞炎の症状
歯性上顎洞炎の症状は、上顎洞炎の症状と歯の症状です。
ここでご紹介した症状は必ず全て起こるというわけではなく、一部の症状だけということも珍しくないです。
●上顎洞炎の症状
上顎洞炎の症状としては、鼻詰まり、鼻水などに加えて、目の下や頬骨のあたりが腫れぼったくなったり、頭が重たい感じなどが挙げられます。
鼻性の上顎洞炎の場合は、この症状が左右両側に起こることに対し、歯性上顎洞炎では原因の歯がある片側だけに生じることが多いです。
●歯の症状
歯性上顎洞炎は、歯が原因で起こるので、歯に何らかの症状が生じます。
歯の痛みや浮いた感じのような違和感、歯肉の腫れ、噛み合わせたときの痛みなどです。
ちなみに、鼻性の上顎洞炎でも、上顎洞内の炎症が原因で、上顎の奥歯に浮いた感じや噛み合わせたときの痛みなどの症状が生じることがあります。
〇歯性上顎洞炎の原因
歯性上顎洞炎の原因は、歯です。
●虫歯の放置
虫歯の原因は、ミュータンス菌などの細菌です。
細菌が乳酸を作り出し、歯が溶かされて虫歯になります。
虫歯を放置していると、どんどん歯は溶かされて、やがて歯の神経である歯髄にまで到達します。
歯髄に到達すると、歯髄組織を死なせてしまいます。
これを歯髄壊死と言います。
壊死した歯髄は、細菌に対する抵抗力がなくなるため、そこでさらに細菌が増殖し、やがて歯の根の先から出ていきます。
このとき、歯の根の先が上顎洞に近い位置にあると、上顎洞粘膜が炎症を起こし、上顎洞炎を発症します。
●根尖病巣
虫歯がかなり進むと、歯髄を取り除く治療が行われます。
歯髄を取り除いた歯の内部空間は、そのままにしていると細菌が繁殖する温床となるため、根管充填材という薬を詰めて、塞ぎます。
ところが、隙間なく詰めたように見えても、実は目に見えないような隙間が残っていることがあります。
歯髄には側枝という顕微鏡サイズの枝があるので、これは避けられません。
この隙間で細菌が繁殖すると、歯の根の先に膿の袋が作られます。
これを根尖病巣と言います。
根尖病巣も、上顎洞に近い位置にできると、上顎洞粘膜が炎症を起こす原因になるので、上顎洞炎を引き起こします。
●歯髄壊疽
歯髄壊疽とは、死んだ歯髄組織が腐敗することです。
歯髄壊疽も根尖病巣を作り出す原因となるため、上顎洞炎の原因となり得ます。
●歯根破折
歯根破折とは、歯の根が割れた状態です。
割れた隙間から、細菌が入り込むと、歯根の周囲に膿がたまるようになります。
上顎の奥歯が歯根破折を起こすと、歯根周囲の膿が上顎洞粘膜に炎症を起こすため、上顎洞炎が生じます。
〇歯性上顎洞炎の治療法
歯性上顎洞炎の治療法は、薬物治療と歯科治療、そして外科治療です。
●薬物療法
鼻詰まりや腫れた感じ、頭が重い感じがするなどの上顎洞炎の急性症状に対しては、抗菌薬を使った薬物治療が行われます。
●歯科治療(歯を残す)
歯性上顎洞炎は歯が原因で生じる上顎洞炎ですので、原因に対する治療、すなわち歯の治療が欠かせません。
基本となるのが、感染根管治療です。
感染根管治療は、歯の根の治療です。
上顎洞へ細菌を供給するルートのほとんどが、歯の根の中の根管という神経があった空洞です。
この部分から細菌が繁殖する土壌を取り除き、内部を消毒することで、上顎洞に炎症を引き起こす細菌を絶つわけです。
●歯科治療(抜歯)
感染根管治療では効果が期待できないほど大きな根尖病巣ができている場合や歯根破折の場合は、抜歯することになります。
抜歯すると、細菌の供給源である歯がなくなるため、上顎洞炎も改善されます。
なお、根尖病巣が大きくなると、上顎洞の底の部分の骨が吸収されてなくなっていることがあります。
このような場合、歯を抜くと、上顎洞の底に穴が開き、お口と上顎洞が繋がってしまうリスクが避けられません。
●外科治療
薬物治療や歯科治療で効果が出ない場合は、外科手術が選ばれます。
以前は、上顎の犬歯の辺りから骨に穴を開ける上顎洞根治手術という手術が行われていましたが、この方法は手術侵襲が大きいため、現在ではあまり行われていません。
現在主流の方法は、鼻から内視鏡を入れて行う内視鏡手術です。
上顎洞根治手術は歯科医師でも行えますが、内視鏡手術は歯科医師は行うことは認められておらず、耳鼻科の医師によって行われます。
〇まとめ
今回は、歯が原因で生じる蓄膿症、歯性上顎洞炎についてお話ししました。
歯性上顎洞炎の原因は、
①虫歯の放置
②根尖病巣
③歯髄壊疽
④歯根破折
などです。
治療法は、
①抗菌薬を使った薬物治療
②歯科治療
③外科治療
です。
蓄膿症の症状がある場合、まずその原因が歯にあるのか、鼻にあるのかを歯科か耳鼻咽喉科にかかって診断してもらう必要があります。
そして歯性上顎洞炎だった場合、その治療には、歯科の知識や経験だけでなく、耳鼻科的な知識も欠かせません。
当院は、歯科治療の専門知識や経験に加え、耳鼻科的な専門知識も有している歯科医院です。
歯性上顎洞炎かどうかでお悩みの方や、どこで治療を受ければいいのかわからないという方は、当院に是非お越しください。