〇歯周炎と歯肉炎の違いについて
●歯周炎の原因と症状について
歯周炎の原因の最たるものは細菌に由来するものです。 細菌が作り出す炎症物質により歯茎の腫れや痛みが出ます。 噛み合わせの不調和によって歯周炎がさらに増悪しやすくなる場合もあります。 その他の原因には全身疾患に起因するものや遺伝子疾患に由来するものなどが存在します。 病態として一部分だけが限局的に悪くなる場合から、歯茎全体が悪くなるものまで様々な病態を呈します。 基本的に35歳以降の成人に見られる場合が多いです。 しかし、それよりも前に発症することがあります。 症状としては、歯茎からの出血や腫れ、歯を支える骨の吸収により歯の揺れが出てきます。 一般的には慢性の経過を辿りますが、体調を崩すなどして全身的に抵抗力が落ちてくると急激に悪化することもあります。
●歯肉炎の原因について
歯肉炎はプラーク性歯肉炎と非プラーク性歯肉炎に大別されます。 プラークとは細菌の集合体です。 プラーク性歯肉炎は歯茎周りの細菌によって起こる歯茎の炎症ということになります。 一般的によく見るタイプはプラーク性の歯肉炎です。 非プラーク性のものはウイルスによるものや全身疾患に関連したものが含まれます。 症状としては歯茎の赤み、出血、腫れ、痛みなどが見られます。
●歯周炎と歯肉炎の違い
歯周炎と歯肉炎には明確な違いがあります。 歯周炎は歯周組織(セメント質、歯根膜、歯槽骨、歯肉)に炎症が波及するので、歯を支える支持組織の崩壊が起こります。 線維や骨の吸収が始まり、付着している線維が失われます。 これを専門的にはアタッチメントロスと呼びます。 アタッチメントロスを起こすと歯周ポケットの形成も起きます。 一方、歯肉炎は歯茎に炎症は起こりますが、支持組織の喪失は起こりません。 従って違いを一言で説明するとアタッチメントロスの有無が歯周炎と歯肉炎の違いになります。 アタッチメントロスの有無は自身で気づくことはできません。 歯茎からの出血があっても、歯肉炎の状態になっているだけかもしれないからです。 歯茎の状態が心配になったら早めに受診をしましょう。
〇歯周炎と歯肉炎の治療の違いについて
●歯周炎の治療法について
歯周炎の治療は
①基本治療
②外科治療
③口腔機能回復治療
に大別されます。
①基本治療ではプラークリテンションファクターと呼ばれるものを除去する治療が行われます。 汚れが付着しやすい環境を改善する治療です。 歯石の除去もその一つです。 その他にも虫歯治療や汚れが付きやすくなってしまった被せ物や詰め物の治療、噛み合わせ治療なども基本治療に含まれます。
②外科治療では深くなった歯周ポケットの除去や口腔粘膜の形態異常を修正する治療が行われます。 最近では状況に応じて骨を誘導する成分を含んだ薬を骨や歯茎に浸透させて骨を再生させる治療もでてきました。
③口腔機能回復治療は主に被せ物や入れ歯やインプラント治療などを行い、見た目や噛み合わせ、発音、咀嚼機能を向上させる治療が該当します。
●歯肉炎の治療法について
歯肉炎はアタッチメントロスがなく、歯肉に限局した炎症です。 従って、一般的にはプラークコントロールで改善する場合がほとんどです。 一部外科処置が必要なものもありますが、基本的にはプラークコントロールをすることによって治癒することが多いです。 その他に歯周炎治療にも登場したプラークリテンションファクターの除去も必要に応じて行います。
●歯周炎と歯肉炎の治療法の違いについて
歯周炎は基本的に治療の流れがあり、場合によっては歯周外科治療や口腔機能回復治療を行います。 一方で歯肉炎の治療ではそれらを行うことは殆どありません。 歯周炎の治療の方が複雑になり治療期間が長くかかります。 どちらにも共通していることは、基本治療をしっかり行うことが重要になります。 特にプラークコントロールはどちらにも共通して重要になります。
〇歯周炎と歯肉炎の予防法の違いについて
●歯周炎の予防法
歯周炎の予防にはプラークコントロールが重要になります。 つまり歯磨きです。 いつも歯磨き指導をされてうんざりするかもしれませんが、プラークコントロールが上手くいっていない状況で治療を進めても上手くいかないことが研究で明らかになっています。 殆どの方は歯を磨く習慣がありますが、磨けていないことが多いです。 また、歯ブラシだけの使用だけでなく、歯間ブラシやデンタルフロスの使用も重要です。 その他には歯周炎のリスクファクターとして喫煙や全身疾患との関連もあるので、それらを改善する余地がある方はそちらも平行して行う必要があります。
●歯肉炎の予防法
歯肉炎はプラークコントロールがしっかりと行われていれば、殆ど問題ないと言えます。小児の場合には歯磨きを嫌がることもありますが、少しずつ慣らすようにして歯肉炎や虫歯の予防を心がけましょう。
〇まとめ
歯周炎や歯肉炎の違いが理解できたでしょうか。 違いを一言で表すとアタッチメントロスの有無です。 両者に共通して重要なのは歯磨きをしっかりと行い、プラークの付着を可能な限り無くすことです。 プラークが付きやすい口腔環境、歯磨きがしにくい口腔環境は歯科医や歯科衛生士が協力して治療にあたります。 歯茎に問題がある方や不安がある方は定期検診や早めの歯科受診などを行うようにしましょう。