こんにちは
都市伝説って聞いたことありますか?
都市伝説とは、都市化の進んだ100年ほどの間に世間に広がったと見られる伝説のことです。
多くの場合、話の出所や根拠が不明確な噂話です。
歯科医療に限らず医療は、科学的な根拠に基づいて行われるものなので、都市伝説とは無縁のものに思われがちです。
ところが、歯科医療の分野でも都市伝説というものは少なからずあるものです。
そこで今回は、歯科医療での都市伝説についてお話しします。
〇歯科での都市伝説のご紹介
歯科医療での都市伝説はいろいろありますが、代表的なのが
①親知らずの抜歯
②高齢者の抜歯
③金属修復物によるアレルギー
④矯正治療
⑤神経を抜いた歯
に関係する都市伝説です。
●都市伝説の具体例
①親知らずの抜歯
これは、親知らずを抜いた後の腫れや痛みに関する話です。
②高齢者の抜歯
こちらは、歳を取ってからの抜歯の治りに関係する話です。
③金属修復物によるアレルギー
歯科治療で使う銀歯が原因で金属アレルギーが出るという話です。
④矯正治療
矯正治療では、何歳までにしなければならないのかという年齢に関係するものが多いようです。
⑤神経を抜いた歯
虫歯治療で歯の神経を抜いた後の予後から生じた話のようです。
〇歯科医療での都市伝説について
先にご紹介した都市伝説について説明します。
●親知らずを抜くと腫れや痛みがひどい
確かに、親知らずの抜歯後の腫れと痛みは、普通の歯を抜いた後よりも強くなりがちです。
ただし、すべての親知らずがそうなるわけではありません。
親知らずは、最後に生えてくる、最も奥の永久歯です。
親知らずが生えてくる頃には顎の成長発育が終わっているので、親知らずが生えるために顎が大きくなるということはありません。
人類の顎の大きさは小さくなっているので、親知らずの多くは生えてくる余地が少なく、斜めに傾いて生えてきたり、埋まったままになったりしています。
このような歯を抜歯するためには、歯肉を切開したり、親知らずやその周囲の骨を削ったりしなければなりません。
親知らず以外の抜歯では、歯肉の切開や骨を削ることはまずありません。
このため、親知らずを抜歯すると、普通の抜歯以上に腫れや痛みが強くなるのです。
もし、親知らずであっても、真っ直ぐ生えているなど条件が普通の歯と同じなら、腫れや痛みも同じくらいで済みます。
親知らず以外の歯であっても、骨の中に埋まったままになっている歯を抜くと、やはり腫れや痛みも強くなります。
●年を取ってから歯を抜くと予後が悪い
話は少し変わりますが、赤ちゃんの骨折って、まず起こりません。
ところが、高齢になると、尻餅をついただけで腰骨を圧迫骨折をする、転んだだけで大腿骨を骨折するというように、骨折のリスクが高くなります。
これは、骨の柔軟性が年々下がっていく、すなわち骨が硬くなっていくからです。
歯を抜くときは、歯の周りの骨の柔軟性を利用して抜きます。
骨の柔軟性が低下すると、それだけ抜歯が難しくなるため、抜歯部位の周囲が受けるダメージも大きくなりますので、治りが悪くなります。
ただし、これも高齢になるとみんなそうなのかというと、そうではなく、若い方と変わらない治り方をする方も多くいらっしゃいます。
●金属の冠を入れるとアレルギーになる
アレルギーの中でも金属に反応するアレルギーを金属アレルギーと言います。
歯科治療では、虫歯やケガでかけた歯の修復に人工材料を使っていますが、銀歯に見られるように金属材料も多用されています。
金属製の被せ物や詰め物を入れると金属アレルギーになるという都市伝説です。
金属製の被せ物や詰め物を入れることが、金属アレルギーを引き起こすわけではありません。
花粉が蔓延する季節に、すべての人が花粉症になるわけではないように、金属製の被せ物や詰め物を入れることが、金属アレルギーを引き起こすわけではありません。
多くの方は、アレルギー症状を引き起こすことなく、金属製の被せ物や詰め物治療を受けていらっしゃいますのでご安心ください。
●矯正治療は子供でないとできない
矯正治療についての都市伝説も広がっているようです。
矯正治療の都市伝説もいろいろありますが、そのひとつが年齢に関わる都市伝説で、子供でしか矯正治療はできない、大人で矯正治療をしても後戻りして効果がないというものです。
矯正治療の年齢は、子供も大人も問いません。
大人になってからでも十分間に合いますし、実際、当院でも大人の方の矯正治療を数多く手がけています。
後戻りについては、どなたの矯正治療でもそのリスクはあります。
そこで、矯正治療の後は、一定期間リテーナーという後戻り防止装置を使っていただくことで、歯並びを後戻りから守ります。
矯正治療は、子供でなければできないというのは、デマと言ってもいい都市伝説なので、大人の方で歯並びが気になる方はぜひお越しください。
●歯の神経を抜くと歯が弱くなる
歯の神経を抜くと歯が弱くなるという都市伝説もあります。
歯の神経は、正しくは歯髄(しずい)といい、神経だけでなく、歯に栄養や酸素を届ける血管も通っています。
歯の神経を抜くとき、神経と血管を選り分けることはできませんので、神経と同時に血管も取り除かれてしまいます。
このため、神経を取り除いた歯には栄養や酸素が届けられなくなります。
また、身体を細菌やウイルスなどの病原性微生物から守る免疫細胞は、血管を通して運ばれてきますので、神経を取り除いた歯の内部は免疫力が作用しなくなります。
こうしたことから、神経を抜いた歯は弱くなるというのは事実です。
しかし、神経を抜かなければならないほど虫歯が進んでしまったのであれば、神経を抜くほか治療法がないので、仕方がないというのが実情です。
〇まとめ
今回は、歯科医療に関わる都市伝説についてお話ししました。
歯科医療に関わる都市伝説は多々ありますが、中でも代表的なのが、
①親知らずの抜歯後の腫れや痛み
②高齢者の抜歯の予後
③金属修復物によるアレルギー
④矯正治療の年齢
⑤神経を抜いた歯の予後
に関係するものです。
正しいものもあれば、単なるデマなものもあります。
正しいものでもケースバイケースで違うのに、すべての人に(歯に)同じことが起こるように伝わるところが問題だといえます。
都市伝説を耳にしたときは、自分に当てはまるのか見極めることが大切です。
そのためには歯科医院で相談なさることが一番です。
もし、歯科医療でよくわからないこと、不思議に思うことなどがあれば、当院でご相談ください。