こんにちは

医療行為には、メリットとデメリットがあります。

矯正治療もそうです。

”歯並びがきれいになる””歯磨きがしやすくなって歯やお口が健康になる””外見に自信がつく”などのメリットだけでなく、デメリットもあります。

矯正治療のデメリットのひとつに、ブラックトライアングルがあります。

ブラックトライアングルは、治療に伴って生じることが避けられない偶発症の一種とされています。

ブラックトライアングルはどのような症状なのでしょうか。

そして、どうして、矯正治療で生じる可能性を完全に解消できないのでしょうか。

今回は、矯正治療で起こりうるブラックトライアングルについてお話しします。

〇ブラックトライアングルについて。

歯と歯の間に見える黒い三角形をブラックトライアングルといいます。

ブラックトライアングル自体には、痛みや腫れ、出血などの自覚症状はありません。

あくまでも審美的な問題であり、歯の健康上の問題とはされていません。

●ブラックトライアングルの原因

健康な歯と歯の間は、歯間乳頭という歯肉で封鎖されています。

歯間乳頭は、弱い歯肉で、炎症を起こすと腫れやすい傾向があります。

実際、歯周病は、歯間乳頭部分の歯肉炎から発症することが多いです。

歯間乳頭が失われると、歯と歯の間を封鎖するものがなくなります。

お口の中には光源がないため、歯間乳頭が失われた歯と歯の間は暗く、歯の色とのコントラストが際立ちます。

こうして、ブラックトライアングルが現れます。

歯間乳頭の消失が、ブラックトライアングルの原因というわけです。

〇ブラックトライアングルが生じやすい歯の特徴

ブラックトライアングルが目立ちやすい歯には特徴があります。

●歯冠の形

歯の歯肉より上の部分を歯冠といいます。

歯冠は、人それぞれ異なります。

歯冠が四角いスクエア型であれば、歯と歯の間の隙間が狭いので、ブラックトライアングルは生じにくいです。

ところが、底辺が小さい台形のような形の歯冠や、タルのような形の歯冠では、歯と歯の間の隙間が広くなりやすいので、ブラックトライアングルが現れやすくなります。

●歯周病

先ほどもお話しした通り、歯間乳頭部分の歯肉は、そのほかの歯肉と比べてとても弱い歯肉です。

少し歯磨きをおろそかにするだけで、簡単に腫れて歯肉炎を起こします。

歯肉炎を起こした歯間乳頭は、歯肉炎が解消したとしても、健全だったとき以上に減少しやすい傾向があります。

歯間乳頭が減少した歯と歯の間の隙間は広くなるため、ブラックトライアングルを生じやすくなります。

●不適切な歯磨き

歯肉が下がることを歯肉退縮と言います。

歯肉退縮の原因はいろいろありますが、最も多いと言われているのが、不適切な歯磨きです。

歯ブラシを使って、必要以上に歯肉を擦ると歯間乳頭をはじめとして、歯の周囲の歯肉が全体的に痩せてしまい、歯肉退縮が起こります。

歯肉退縮を起こすと、歯と歯の間が相対的に広がります。

この結果、ブラックトライアングルが生じます。

●年齢

歯周病が認められない健康な歯でも、実は年齢とともに、少しずつ歯肉が下がっていきます。

健康な若い方ではブラックトライアングルを生じるほど歯肉退縮を生じませんので、年齢要因は、中高年の方にとってのブラックトライアングル発症要因です。

〇矯正治療後にブラックトライアングルが生じやすい理由

矯正治療を受けた結果、ブラックトライアングルが生じることがあります。

●叢生が解消したから

叢生とは、乱杭歯ともよばれる、たくさんの歯が重なり合っている歯列不正です。

歯のサイズと歯が並ぶスペースのバランスが取れず、歯が並ぶスペースが不足していると起こります。

叢生の歯並びでは、歯が重なり合うことで、歯と歯の間が隠されてしまい、隙間が見えなくなってしまうことがあります。

矯正治療を受けて歯の重なりが解消されると、それまで見えていなかった歯と歯の隙間が見えるようになり、ブラックトライアングルが生じてしまいます。

●歯肉が健康になったから

歯列不正の多くでは、歯ブラシを適切に歯の表面に当てたり、歯間ブラシやデンタルフロスを歯と歯の間に通したりすることが困難です。

このため歯肉炎を起こしやすく、歯と歯の間の隙間が腫れた歯肉で覆われて隠されてしまいます。

矯正治療を受けると、歯並びが整えられ、歯磨きがしやすくなります。

歯磨きがしやすくなることで、歯と歯の間の歯肉炎も解消され、歯肉が引き締まることで、歯と歯の間の隙間が広がります。

歯並びが整えられ、歯磨きがしやすくなることで歯肉炎が解消される、すなわち歯肉が健康になることが、ブラックトライアングルを生じる原因になります。

●歯列不正のために歯間乳頭がもともとなかったから

上顎の前歯部の歯が内側にずれている歯列不正など、歯根と歯根の距離がとても近くなっている歯列不正があります。

歯根と歯根の距離が短いと、歯間乳頭が少ない、もしくはそもそも存在しないということもしばしばみられます。

そのような歯列不正を矯正治療で改善させると、もともと歯間乳頭がないので、歯並びが整ったのち、ブラックトライアングルが生じやすくなります。

〇まとめ

今回は、矯正治療で生じやすいブラックトライアングルについてお話ししました。

ブラックトライアングルは、歯間乳頭が減少することで生じやすい審美的な問題のひとつです。

歯周病や不適切な歯磨き、年齢だけでなく、矯正治療によってもブラックトライアングルは起こりえます。

残念ながら、矯正治療前にブラックトライアングルが、どこにどの程度発生するのかを予測することはとても難しいです。

もし、ブラックトライアングルのリスクをどうしても避けたいのなら、矯正治療を受けないというのも、選択肢のひとつです。

当院は、矯正治療の専門知識だけでなく、治療経験も豊富な歯科医院です。

矯正治療には、ブラックトライアングル以外のリスクもあります。

もし、こうしたリスクを不安に思っていて、矯正治療に踏み切れないという方は、当院で一度相談だけでもしてみませんか。