自費診療のかぶせもの
被せ物を入れる治療は多くの方が経験する治療だと思います。例えば虫歯で神経を取ることになり、その後に被せることは珍しくありません。被せ物は保険診療・自費診療ともにあります。それぞれ長所と短所があり、歯科医師が提案する中で患者さんが選択することとなります。特に今回は自費診療で行う事の多くなったジルコニアクラウンに焦点を当てていきたいと思います。
【目次】
・ジルコニアクラウンとは?
・保険診療との違いはどこ?
・ジルコニアクラウンの種類
・まとめ
〇ジルコニアクラウンとは
⇒保険診療では使用できない材料。メリットとデメリットそれぞれあります。
メリット
・強度があり割れにくい
・保険の被せ物に比べてきれいに仕上がる
・汚れが付きにくく、虫歯になりにくい
デメリット
・硬すぎるが故に咬み合わせに気を付けないと向かいの歯が摩耗する
・保険が効かない為、高額である
●素材
ジルコニアクラウンは多くの歯科診療所で提供される被せ物の1種です。皆さんがよく聞くセラミック治療の中にジルコニアを使用した治療があります。
ジルコニアは酸化ジルコニウムという素材で非常に硬い材料です。歯はエナメル質や象牙質といった硬い組織の複合体です。強度を試す試験によりエナメル質や象牙質の硬さを比較するとジルコニアの硬さの方がそれぞれよりも強度があると言われています。従って壊れにくい材料といえるでしょう。
色は作り方により差はありますが、保険の被せ物よりも色味がよく、自身の歯の色に近づけることが出来る材料です。その他に、表面が滑沢なので汚れが付きにくく虫歯になりにくい事が利点として挙げられると思います。
●メリットとデメリット
被せ物をした歯は虫歯にならないと思う方がたまにいらっしゃいますが、被せてある歯でも被せ物と自身の歯の隙間から虫歯になることは少なくありません。ジルコニアクラウンは精度が高く作れますので、虫歯になりにくいメリットもあると思われます。
一方でデメリットもあります。材料自体が非常に硬いので、調整をきちんと行わないと向かいの咬み合う歯が摩耗してしまう恐れがあります。
被せて終わりではなく、被せた後に再度調整が必要な場合もあります。また、保険診療では使用できない材料なので自費診療になり金額が高いです。扱っている診療所により料金に差があるので、選択する際はかかりつけの歯科医院に尋ねてみてください。
〇保険診療との違いはどこ?
⇒強度・見た目がジルコニアクラウンの方がよい。金属アレルギーの心配もないです。
ジルコニアクラウンについて簡単に理解したうえで、保険診療で行う被せ物との違いを確認しましょう。保険では従来の銀歯そして最近では通称CAD/CAM冠という白い被せ物を入れることが可能になってきています。
●金銀パラジウム合金
健康保険の銀歯に使用される金属は金銀パラジウム合金という合金です。金属の為に壊れる可能性は低いですが、前歯以外では表面を白くすることが出来ないので見た目が悪いです。また、金属アレルギーの心配がある方には不向きな材料です。
●CAD/CAM冠
健康保険のCAD/CAM冠はプラスチックに近い材料のブロックを機械が削り、それに色を付けたりして被せる方法です。金属を使用しない為にアレルギーの心配はありませんし、今までのようにぱっと見では被せが入っていると判別しにくくすることが可能です。
弱点としては、強度がないので割れてしまったり取れてしまったりのトラブルが多いです。
特に咬み合わせが深い方、咬む力が強い方、歯ぎしりなどの癖がある方など負荷がかかりやすい部位への適応はお勧めできないです。
また、健康保険では2年間作り直しができませんので、そういう意味でもおすすめはしません。
CAD/CAM冠は白い被せ物の為、セラミック治療やジルコニアの治療が保険でも出来るようになったと思われるかもしれませんが、使用している材料は全く異なります。
〇ジルコニアクラウンの種類
ジルコニアクラウンを作るにあたって、作る方法としては大きく2種類ほどあります。
●①ジルコニアクラウンに色を付けて製作する方法
ジルコニアだけで作成した場合は色が自身の歯と少し合いません。自身の歯に近づけるために後から色を付けて作成します。この場合は工程がもう一方の物よりも少なく済むため、比較すると安価なことが多いです。
●②ジルコニアフレームにセラミックを盛り足して製作する方法
ジルコニアで全て形を作るのではなく、内部のフレームをジルコニアで作成します。その後に表面をセラミックで盛り足す方法です。この場合は工程が増えるので金額が①よりも高くなる傾向です。しかし、見た目はきれいに仕上がり、透明感も①よりも出しやすい方法となります。
選択される患者さんの中では奥歯には透明感をそこまで重視しないので①を選択し、前歯はよりきれいに仕上げたいので②を選択する場合もあります。もちろん両方①や②で行う方法も可能です。金銭的な問題や咬み合わせの問題などがなければ、どれを選ぶかは患者さんの選択になります。
※①と②どちらもジルコニアという素材を使用していて強度がありますが、100%壊れないわけではありません。負荷が余りに強くかかる歯などには適用できない場合もありますので、歯科医師とよく相談してから選択するようにしましょう。
〇まとめ
保険診療で行う被せ物とジルコニアクラウンを比較してきました。どれを選択するかは悪条件でない限り、患者さんが選択すると思います。経済的な制約などがなければジルコニアという素材は悪いものではないと思います。見た目と強度やアレルギーのリスクがないという恩恵は大きいと思います。よく検討して後悔の無い選択をされる事をお願いします。