高齢者の場合には抗凝固薬など血が止まりにくい薬を服用している場合があります。        基本的には止血に注意を払い、薬は継続してもらい治療を行います。               しかし、血をサラサラにする薬を複数の薬を飲んでいる場合には内科等への対診が必要になります。  それらの薬を服用している方への注意事項を伝えています。

〇血をサラサラにする薬について

血をサラサラにする薬(血が止まりにくい薬)を服用している方は、基本的に高齢の方に多いです。 というのもこの様な薬は、心筋梗塞や脳梗塞、狭心症などの疑いや既往歴がある方に対して処方されるからです。                                          これらの薬を飲んだ上での歯科治療はどの様な問題があるのかを確認したいと思います。      血をサラサラにする薬については大きく分けて、2種類が存在します。               抗血小板薬と抗凝固薬です。それぞれどの様な特徴があるのかを確認しましょう。

●抗血小板薬について

抗血小板薬は狭心症や脳梗塞の予防、冠動脈のステントに血栓がつかないように処方されることがあります。                                           その様な疾患は血流の早い環境下での血小板の活性化による動脈血栓が主な病態と考えられ、     抗血小板薬が処方されます。

●抗凝固薬について

抗凝固薬は深部静脈血栓症や肺塞栓などに対して処方されることがあります。           血流が停滞した環境下での凝固因子の活性化による静脈血栓が主な病態であると考えられます。   以前はワーファリンという薬を使用することが殆どでしたが、                  最近では直接経口凝固薬(direct oral anticoagulants:DOAC)という薬がよく使用されてきています。 食事による影響がなく、ワーファリンの様に効果発現の個人差が少ないためです。          利点が多いために利用頻度が多いです。

これらの薬はどちらも血液をサラサラにする効果があります。                   抗血小板薬と抗凝固薬の使用は抗血栓療法と呼ばれることがあります。

●抗血栓療薬について

抗血小板薬の例としてはバイアスピリン、パナルジン、プラビックス、プレタールなどがあります。 抗凝固薬の例としてはワーファリン、DOAC[プラザキサ、エリキュース、イグザレルト、リクシアナ]などがあります。                                     これらの薬は単独で使用される場合がありますが、併用して複数錠を服用していることがあります。 どの薬を何錠飲んでいるかは把握しておきましょう。                      もしお薬手帳があれば、確認して治療の際には必ず歯科医院に持って行く様にしましょう。     服薬する薬の種類や量が変わった場合にも必ず伝えるようにお願いします。

〇抗血栓療法と歯科治療について

抗血栓療法はどちらも血が止まりにくい状態になります。                    歯科治療においてどの様な問題が起こるのかを確認しましょう。                 まず、虫歯治療や入れ歯治療などの一般的な歯科治療においては通常通り行うことが可能です。   それらの薬を飲んでいるからといって治療が行えないということはありません。

●抗血栓療法中の歯科治療の問題点

一般的に問題が出てくるのは歯科においては外科治療を行う場合です。              外科治療というのは歯を抜く、歯茎を切る、インプラントをするなど血が出る処置のことを指します。歯石取りの際に血が出ることがありますが、それは外科処置ではありません。           抗血栓療法を行っている方の場合は、その様な治療の際に出血が止まりにくいことが予想されます。 処置終了後に止血を行い、止血ができたことを確認して帰宅して頂くので、処置に時間がかかる場合があります。

●抗血栓療法中における患者さんの注意点

抗血栓療法中の方においての注意事項としては、

①薬の情報を歯科医院に提供すること

②薬を勝手に休薬しないこと

があげられます。

①については抗血栓療法中の患者さんは一般歯科治療においては、あまり注意を要しませんが、   外科処置を行う際に止血が必要になります。                          外科処置前には予め止血ができる状態に機材等を準備をしておく必要があります。          また、複数の薬を服用している場合には内科などへの対診をする場合があります。         事前の情報共有がない場合には、外科治療を見送る可能性がありますので、            必ず薬の情報を伝える様にしましょう。                             お薬手帳を持っている場合には必ず持参しましょう。

②については薬を勝手に止めてはいけません。                         血がサラサラになるからと抗凝固薬などを止めてしまうと、                   休薬中に脳梗塞や心筋梗塞のリスクが高くなることが知られています。              現在では抗血栓療法で使用される薬を止めずに治療を行い、                   止血をしっかりと行う様にしています。                            薬や全身状態の確認は基本的には必要になりますので、                     歯科医師が内科への対診を行うことが多いです。

〇まとめ

歯科治療における抗血栓薬服用中の方についての対応などを確認してきました。            基本的に歯科治療においては一般的な虫歯治療や歯周病治療などは問題なく行えると思って頂いて良いでしょう。                                         注意が必要になるのは血が出る恐れのある外科処置の場合です。                  その際には事前に内科などへ照会を行い、病状や薬の服薬状況を確認した上で行います。      基本的には薬は服用したままで処置を行うため、自身の判断で薬を止めるのはやめましょう。    また、処置中や処置後に血が止まりにくいことが予想されます。                 しかし、それに対応する処置を行えば時間がかかりますが、徐々に出血は止まります。       歯科で外科処置を予定されている場合には、治療の前には薬などの情報を提供するようにして下さい。また、治療を受ける時には時間にはゆとりを持って受けるようにしましょう。