検診でお口の中のチェックをしたり、レントゲン写真を撮ったりした時に親知らずの存在をお伝えすると、「抜いたほうが良いですか?」と、聞かれることがよくあります。

答えは・・・親知らずの状態によります。

親知らずを保存するべきか、抜くべきかは人それぞれです。

では、どのような時に親知らずを抜くべきなのか、どのような時は抜かずに保存するべきなのか。

みていきましょう。

今回の記事はこんな方におすすめです!

・親知らずが生えている方

・親知らずが腫れたことのある方

・親知らずを抜こうか迷っている方

目次

1. 親知らずを残しておくことでのメリット・デメリット

           1-1. 親知らずを残すことで生じるメリット

           1-2. 親知らずを残すことで生じるデメリット

2. 親知らずを抜く必要がない症例、抜いたほうが良い症例

           2-1. 親知らずを抜く必要がない症例

           2-2. 親知らずを抜いたほうが良い症例

3. 抜歯の際の注意点

4. まとめ

〇1.親知らずを残しておくことのメリット・デメリット

お口の中の状態によってメリット・デメリットは変化します。

ここでは、一般的なメリット・デメリットについて説明していきます。

●親知らずを残すことで生じるメリット

・咬むことが出来る歯が増える、咀嚼効率が上がる

上下の親知らず同士、又は親知らずとその一本前の歯と咬み合うことにより、咬み砕く力が強くなります。

・ブリッジや、入れ歯を支える歯になることができる

親知らずより手前の歯を失った場合、親知らずがあればブリッジの土台や、入れ歯のバネをかける歯として利用することができます。

・他の場所に移植することができる

奥歯を抜かなければいけなくなった場合、その部位に親知らずを移植することができます。

●親知らずを残すことで生じるデメリット

・プラークコントロールが不良になりやすい

親知らずはお口の中の最も奥にあるため、歯ブラシを届かせるのも難しく、汚れが残りやすくなります。

それによって、虫歯や歯周病のリスクが高くなります。

・虫歯の治療が困難

親知らずが虫歯になった場合、治療のための器具を歯に届かせるだけでも難しくなります。

また、親知らずは歯の内部の構造が複雑で、個々の歯によっても異なります。

特に神経の入っている根の部分が複雑なので、神経を取る治療などは、かなり難易度の高い治療となってきます。

・隣の歯に悪影響を与える可能性がある

親知らずが虫歯や歯周病になった場合は抜歯するという選択肢もありますが、隣接する歯にも虫歯が出来る、歯周病が及んでしまうといったリスクがあります。

・歯肉が腫れたり痛みが出たりする可能性がある

親知らずが完全に生えてきておらず、半分歯肉に埋まっている場合などは、そこに細菌感染が生じやすく、歯肉の腫れや痛みが出る可能性があります。

特に、体調の悪い時や、妊娠中などに腫れやすい傾向にあります。

・歯並びが悪くなる可能性がある

親知らずが隣の歯を圧迫することにより、全体的な歯並びがガタガタになることがあります。

〇2.親知らずを抜く必要がない症例、抜いたほうが良い症例 

では、今度は抜歯をお勧めする症例、そのまま保存して経過をみることをおすすめする症例を、お口の中の状態ごとにみていきましょう。

●親知らずを抜く必要がない症例 

・真っすぐに生えていて、反対側の歯と噛んでいる場合

・しっかりと歯磨きが行き届いている場合

・歯肉の下に埋まっていて、お口の中からは確認できない場合(レントゲンでのみ存在が確認できる場合)

・虫歯などがなく、他の奥歯に抜歯予定の歯がある場合(移植に使用できそうな場合)

●親知らずを抜いたほうが良い症例

・ブラッシングが難しく、虫歯や歯周病のリスクが高い場合

親知らずの虫歯は治療が困難です。

また、手前の歯と接する面に虫歯が出来てしまうと、隣の歯まで虫歯になりかねません。

歯周病の場合も、親知らずの周囲の歯肉が炎症を起こして歯槽骨が溶けてしまうということは、その隣の歯の周囲の歯肉及び歯槽骨も影響を受けてしまうということですね。

隣の歯を守る為に親知らずを抜く、という選択が必要となります。

・親知らずの周囲の歯肉が腫れる・痛みを出す場合

親知らずが完全に生えてきておらず、半分くらい歯肉に埋まっていると起こりやすい症状です。

頑張ってブラッシングをしていても、歯肉の中まではお掃除できないので、そこで細菌が増殖しやすくなります。

特に、体調不良時、妊娠中のホルモンバランスが不安定な時などに腫れやすくなります。

・親知らずが隣の歯を圧迫しており、歯並び全体に悪影響を及ぼしかねない場合

特に矯正治療を考えている方は注意が必要です。

せっかく矯正治療によって綺麗な歯並びを手に入れたのに、親知らずによって歯並びが変化してしまうのは避けたいところですね。

〇3. 抜歯の際の注意事項 

親知らずを抜く場合、事前に注意しておいたほうが良いことがあります。

・体調の良い時に抜歯する

歯を抜いたあとは、お口の中に傷が出来た状態となるので、細菌感染のリスクがどうしてもあります。

通常であれば、体内の免疫の働きや、抜歯後に処方するお薬などで感染を回避することができますが、寝不足が続いている、忙しくて疲労困憊しているなど、御自身の免疫力が低下していると、抜歯後に腫れてしまうリスクが高くなります。

忙しい時期などは、抜歯を避けたほうが安心です。

・抜歯後のスケジュールを確認する

体調が良い時であっても、親知らずの状態によっては抜歯後に頬が腫れることや、痛みが若干残る可能性が考えられます。

写真撮影がある、試験や面接を控えているなど、大事な用事がある場合は、抜歯の日程を考慮したほうが良いでしょう。

また、抜歯をした日はスポーツや飲酒はNGです。温泉や長風呂もおすすめしません。お気をつけください。

・腫れて痛みがあるときは抜歯NG!

「親知らずが腫れて痛いので、今すぐ抜いてください!」という方がたまにいらっしゃいます。

お気持ちはわかるのですが、腫れている時は、抜歯はできません。

なぜかというと、麻酔の効きが悪くなるからです。

まずはお薬で腫れを鎮めて、落ち着いてから抜歯するようにしましょう。

4.まとめ 

・親知らずを残すことで、咬む歯が増える、ブリッジや入れ歯を支える歯として利用できる、移植に使えるなどのメリットがある。

・親知らずを残すことで、清掃が困難、虫歯や歯周病になりやすい、周囲の歯に悪影響を及ぼすなどのデメリットが考えられる。

・親知らずが、他の歯と同じようにしっかりと生えている、ブラッシングが行き届いている、もしくは生えてきていない場合は、無理に抜く必要はない。

・親知らずが何度も腫れる場合や、周囲の歯や歯周組織に悪影響を及ぼす場合は、抜歯していくことをおすすめする。

・親知らずを抜歯する際は、体調の良い時に。また、その後の予定があまりないときがおすすめ。

・親知らずが腫れている時は、抜歯が出来ないので注意が必要。

親知らずを抜く場合、抜かない場合、双方にメリット・デメリットが存在します。

抜歯に踏み切るかどうかは、お口の中の状態をみて、残すメリットよりも残したことで生じるデメリットが大きいかどうかで判断するのが良いでしょう。

抜歯自体が非常に困難な症例もあります。

当院では、お口の中の状態およびレントゲン写真などをみて、親知らずの状態や、抜歯が必要かどうかなど、御説明させていただきます。

ご自身の親知らずの現在の状態、そして、将来的なリスクなど、気になることがございましたら、ご相談ください。