先日、「定期検診のつもりで歯科医院を受診したら、歯周病が見つかり歯石取りをすすめられました。歯石取りは苦手なのに・・・」というツイートをみました。

確かに歯石取りは嫌な方にとってはあまり気持ちの良いものではないかもしれません。

ですが、歯石取りは、歯の健康にとってとても大切です。

今回は、歯石取りの効果と必要な理由についてお話しします。

■歯石と歯周病

まずは、歯石と歯周病の関係についてご説明します。

○歯周病とは

歯周病とは、歯周組織に生じる病気です。

歯周組織とは、”歯肉””歯槽骨(歯の周りの骨)””セメント質(歯根の表面を覆う硬いもの)””歯根膜(骨とセメント質をつなげている靭帯のような組織)”の総称で、いずれも歯を支えるために欠かせません。

歯周病は、これら歯を支えるために欠かせない歯周組織に生じる炎症性の病気です。

○歯周病の症状

歯周病は、歯肉の腫れから始まります。

そして、出血しやすくなり、やがて歯槽骨が吸収されて減っていきます。

骨が減っていくことで、次第に歯を支えられなくなります。

こうして、歯がぐらぐらとし始め、最終的には抜けてしまう、これが歯周病の症状です。

○歯周病の原因は菌

では、歯周病はどうして起こるのでしょうか。

その原因は、歯周病菌という細菌です。

歯周病菌はたくさんの種類があるのですが、いずれの歯周病菌も歯の表面についているプラークに潜んでいます。

プラークは、歯の表面を爪や爪楊枝などで擦ると取れてくる白いカスのようなものです。

虫歯や歯周病治療でプラークを取り除くプラークコントロールが大切と言われるのは、その内部に虫歯や歯周病の原因菌が潜んでいるからなのです。

○歯石と歯周病

歯石は、歯の表面についてる乳白色の石のように付着物です。

歯石の正体は、古くなったプラークです。

困ったことに、歯石の表面は、顕微鏡でみるとデコボコとしていて、無数の小さなくぼみや穴があります。

この小さなくぼみや穴は、新しいプラークが付着する土台となります。

言い換えると、歯石のくぼみや穴は歯周病菌にとっての魚礁のようなものです。

歯石を取り除かないことには、歯周病菌をなくすことはおろか、減らすこともできません。

このため、歯石をついたままにしておくことは、歯周病の悪化を引き起こします。

これが、歯石取りが歯周病治療で欠かせない理由です。

■歯石取りの方法

歯石取りはどのようにして行うのでしょうか。

○スケーリングとルートプレーニング

スケーリングは、歯の表面についた歯石やプラークなどを取り除く処置です。

ルートプレーニングは、歯周病菌などによって汚染されたセメント質を取り除く処置です。

これらの処置で使う器具をスケーラーとよんでいます。

スケーラーは、”超音波スケーラー”と”ハンド(手用)スケーラー”の2種類あります。

超音波スケーラーは、超音波の振動で歯石を取り除く器械で、たくさんの歯石を取り除くのに適しています。

ハンドスケーラーは、たくさんの歯石を取り除くのには適していませんが、細かな歯石を取り除くのに使われます。

○PMTC

PMTCとは、Professional Mechanical Tooth Cleaningの頭文字を合わせた言葉で、歯科医療者が専用の器具を使って歯の表面をきれいに磨く処置です。

歯の表面を電動歯ブラシのような器械と研磨剤を使って磨きます。

こうすることで、歯石を取り除いた歯の表面をツルツルにして、プラークや歯石がつきにくくします。

■歯石取りが苦手な方は

歯石取りが苦手という方は、「痛む」「しみる」「音が苦手」「水がたまるのが苦手」などという理由が多いようです。

○局所麻酔をしてもらう

歯石の除去を受けるとき、「歯がしみる」「歯が痛い」という方は、処置の前に局所麻酔をしてもらってみてはいかがでしょうか。

注射の痛みは確かにありますが、一瞬だけです。

麻酔をしてから、歯石の除去に取り掛かると、処置中の痛みが緩和され、受けていただきやすくなります。

○ハンドスケーラーにする

超音波スケーラーは、効率よくたくさんの歯石を取り除けますが、「音やしみる感じがするのでどうも苦手」という方もしばしばおられます。

このような方は、超音波スケーラーではなく、ハンドスケーラーで歯石の掃除を受けるのもひとつの方法です。

○水平にまで倒さない

お口の中に水がたまるのが苦手で歯石の掃除が難しいという方もおられます。

このような方の場合は、歯科の診療台の椅子をあまり倒さない、ヘッドレストを高くして頭を起こし気味にすると、喉の奥に水が流れて行きにくくなるので、楽になります。

座った姿勢に近い姿勢にしてもらい、歯石の掃除を受けてみてください。

○何回かに分ける

上顎と下顎の全ての歯が揃っていると、合計で28本、親知らずを含めると32本になります。

これらの歯についた歯石を一度に取り除こうとすると、とても長い時間がかかります。

歯石取りが苦手な方にとっては、長時間の歯石取りはとてもストレスに感じることでしょう。

そこで、一度で全ての歯石を取り除こうとしないで、何回かに分けてもらってはいかがでしょうか。

通院の手間は増えますが、受けていただきやすくなると思います。

○定期的に取り除いてもらう

歯石はどれだけきれいに歯を磨いていても、ついてくるものです。

たくさんついてから取り除くとなると、歯石とりにかかる時間も長くなります。

歯石は古くなると、より頑固にこびりつき、取り除くのが難しくなります。

そこで、歯石がたくさんたまらないうちに定期的に取り除いてもらうようにすると、歯石取りがより楽になるので、苦手な方にも受けていただきやすいです。

■まとめ

今回は、歯周病治療で歯石取りが欠かせない理由と、少しでも楽に歯石を取るための方法などについてお話ししました。

歯石は歯周病の原因である歯周病菌の温床となるので、歯石取りは歯周病治療では欠かせません。

苦手な方は、

①局所麻酔をしてもらう

②ハンドスケーラーにする

③水平にまで倒さない

④何回かに分ける

⑤定期的に取り除いてもらう

このような方法をご検討ください。

きっと歯石取りが楽になることでしょう。