テトラサイクリンというのは抗生物質の一種です。 かつては風邪薬などに使用されていたこともありました。 しかし、歯の形成時期にこの薬を服用すると歯の変色の原因となることが知られています。 テトラサイクリン自体、薬として用いられることは現在でもありますが、 乳幼児には服用など避けるように注意が促されています。 ただし、全身疾患などにより使用が優先される場合もあり、 このような副作用が出てしまうことは今後も考えられます。 今回はテトラサイクリンによる歯の変色(テトラサイクリン歯)について知りましょう。
〇テトラサイクリン歯になる原因と症状
テトラサイクリン歯はその名が指すようにテトラサイクリン系抗生物質を乳幼児期に服用することで起こる副作用の一つとされています。 歯の形成時期に服用することにより起こる副作用のため、歯が生えてから服用しても歯の変色には寄与しません。 テトラサイクリンは亜鉛や鉄、カルシウムなどと結合しやすい性質があります。 その為、服用することにより歯の象牙質のカルシウム成分と結合し、象牙質中に沈着してしまいます。その後、紫外線など太陽光などが当たると化学反応を起こし色が変わった結果であると言われています。 症状としては歯の変色やエナメル質形成不全を起こす可能性があることが知られており、 特に歯の変色はその状態によりクラス分けがされています。
歯の変色の分類はファインマンの分類が知られており、第1度(軽度)から第4度(重度)まであります。 それぞれの特徴を確認してみましょう。
第1度:縞模様がなく、歯全体が一様に淡く黄色・褐色・灰色の着色が認められる。
第2度:縞模様がなく、第1度よりも色が濃いもの。
第3度:縞模様が見られ、濃い灰色や青みを帯びた灰色がみられるもの。
第4度:縞模様が明瞭で着色が濃いもの。
以上のように分類されます。
テトラサイクリン歯は健康上で何か問題があることはほとんどないと考えて良いと思います。 しかし、見た目の点から改善をしたいと思われる方が多いと思います。 治療においてはいくつかの選択肢がありますが、 ファインマンの分類の程度により治療法が狭まる可能性があります。
〇テトラサイクリン歯を治療する方法
テトラサイクリン歯を治すにはいくつかの方法があります。 代表的なものは①ホワイトニング、②ラミネートベニア、③クラウンなどが挙げられます。 メリットとデメリットがあるのでそれらを踏まえた上で選択する必要があります。 それぞれを確認していきましょう。
①ホワイトニング
ホワイトニングはその名の通り歯を白くする方法です。薬剤を使用して歯を白くさせるので、歯を削る必要がありません。薬剤を使用するため、使用後に歯がしみるなどの症状が出てしまう場合があります。また、歯の形を変えるわけではないので歯の形態を変えたい場合には不向きです。適応としては、ファインマンの第1度、2度です。第3度以上になると縞模様があるので、ホワイトニングをすることにより不自然な白さになることや効果が得られにくいことが言われています。
②ラミネートベニア
ラミネートベニアは歯の表面を一層削り、削った面に薄くセラミックなどを貼り付ける方法になります。 つけ爪の方法を歯に応用したような感じです。 歯を削る必要がありますが、重度のテトラサイクリン歯にも適応することが可能です。 また、ホワイトニングと比較すると短期間に歯の変色を改善することが可能です。 しかし、表面にセラミックを貼り付けしているだけなので、 貼り付けたものが欠けたり外れたりする可能性があります。
③クラウン
クラウンを被せる方法も一つの選択肢です。 被せる方法は歯を一番多く削る方法になります。 クラウンの治療は一般的に神経を取った歯に行われることが多いです。 テトラサイクリン歯の神経は普通温存されるので、削ることによる歯のしみる症状や痛みなどの不快症状が出る可能性があります。 削る量が多くなればその可能性が高くなります。 しかし、歯の形を変えたい場合や他の歯も含めて全体的に見た目の改善をしたい場合には、 選択肢として上がりやすいです。 例えば上の歯4本から6本を全体的に治療する場合などです。 重度のテトラサイクリン歯に対応可能です。
それぞれのメリットとデメリットをみましたが、どこに重点を置くかで治療方法が異なります。 また歯の状態、噛み合わせの状態などからも選択肢が変わる可能性があります。 変色に悩んだ際には一度、歯科医師と相談してみてください。
〇まとめ
テトラサイクリン歯は珍しいものではありません。 現在でもテトラサイクリンは歯茎の塗り薬や皮膚科領域での治療などに使用されており、 有効な抗生物質です。 テトラサイクリン歯は薬の服用により起こった変色であり、 見た目だけの問題である場合がほとんどです。 しかし、審美障害はコンプレックスになりやすく、治療したいと思う方も多いのではないでしょうか。治療方法はいくつかありますが、どれが自分に合っているか先ずは歯科医師と相談してみて確認しましょう。