歯科治療は患者さんが緊張していて、治療の際に浸麻などを用いる治療では特に患者の気分が悪くなる場合や意識がなくなる場合があります。
どういった時にどのような反射が起こるのかを確認していただき、患者さんに過度な緊張を抱かないようにしていただく狙いがあります。
〇歯科治療における反射とは
●歯科治療における迷走神経反射とは
歯科治療では迷走神経反射以外にも過換気症候群、アナフィラキシーショック、局所麻酔中毒等がありますが、ここでは迷走神経反射に注目します。
迷走神経反射という言葉自体を初めて耳にする方が多いかもしれません。 歯科治療に対する不安・恐怖・極度の緊張などの精神的ストレスが背景にあり、痛み刺激などが与えられることにより、迷走神経緊張状態となり発症する全身的偶発症を血管迷走神経反射といいます。
歯科治療においては最も多いのが全身的偶発症になります。 自覚症状としては悪寒、悪心、めまい、脱力感があります。 他覚症状としては顔面蒼白、血圧低下、徐脈、嘔吐、意識レベルの低下などが挙げられます。
●歯科治療における迷走神経反射の特徴
迷走神経反射は若年者に多く、男性と女性では女性の方が多いとされています。 また飲み薬、例えば高血圧薬などの服薬の状況によってはリスクになることも示唆されています。 血圧や脈拍などの測定をしていても反射が起きることがあり、予想することが難しいです。 人によりストレスの感じ方や痛みの感じ方は異なるので、同じような治療をしていても迷走神経反射が起きる方、起きない方がいます。
〇歯科治療で気分が悪くなったら
●歯科治療で迷走神経反射がおきたら 患者さんがすること
患者さんは自覚症状として気分の悪さや冷や汗などが出てきます。 その場合は我慢せずにきちんと担当医や衛生士に伝えるようにしてください。 続けていても症状が治る可能性は低いです。 早めに横になるなど緊張を解いてリラックスできるような状態にする方法が治りやすいです。 また、反射が起きた当日はそれ以降の治療は緊急性がない場合を除いて中断した方が無難です。 早期に体調が落ち着いた場合には再開することもありますが、予定していた治療が全てが行えない可能性があります。 行った場合には再度反射が起きる可能性もあるので無理はしない方が良いでしょう。
●歯科治療で迷走神経反射がおきたら 歯科医院ですること
歯科医院で患者さんが迷走神経反射を起こした場合には、治療をやめて休んでもらうことになります。その時には血圧や脈拍、酸素飽和度などを確認します。 歯科医院では時として、酸素投与や薬を準備する場合があります。 酸素投与は迷走神経反射に伴って失神が起こることがあるからです。 酸素吸入は失神により減少した脳血流酸素量を増加させることが出来ます。 酸素吸入が失神からの回復を促すという因 果関係は認められないのですが、酸素投与による合併症はないことから失神が生じた場合に酸素投与を行うことがあります。
また、徐脈を伴う血圧低下を認めた時には薬(アトロピン硫酸塩)を投与します。 これ以外に迷走神経反射なのか他のアレルギー症状や全身疾患の急性発作なのか確認する必要があります。 他の疾患の場合では重篤の場合には時として命に関わる恐れがあるので鑑別が重要になります。
〇歯科治療で気分が悪くならないような予防法
●歯科治療で気分が悪くならないような予防法 患者さんが行うこと
基本的に迷走神経反射は反射のため、全くさせないようにすることは難しいです。 ストレスに加えて痛みなどの刺激が加わることによって生じるので、歯科治療というストレスがかかり易い場面では反射が生じ易いことは想像に難くありません。 迷走神経反射というものの存在や症状を知っておくだけでも変わるかもしれません。 気持ちが悪くなるので心配かもしれませんが、基本的に短時間で治るものであまり過度な心配は禁物です。
●歯科治療で気分が悪くならないような予防法 歯科医院で行うこと
歯科医院では迷走神経反射を起こした既往がある方や歯科恐怖症の方に対しては、笑気(亜酸化窒素)吸入鎮静法や静脈内鎮静法などを行うことがあります。 意識を保ったままリラックスした状態で治療をすることが可能となり、迷走神経反射が起こるリスクを下げることが可能になります。 どこの医院でもやっているわけではないので、もし心配な方は通院しているところで上記の方法をやっているかを確認してみましょう。
〇まとめ
迷走神経反射という聞きなれないものを確認してきました。 患者さんは治療中に気持ちが悪くなるので心配してしまうかもしれませんが、比較的すぐに元に戻る反射です。 原因としては精神的ストレスと歯科治療という痛みを伴いやすい治療です。 どちらも歯科医院で治療するにあたって避けて通ることができないものです。 患者さんはできる限り緊張をしないようにしましょう。 ただし、過度に意識するのもかえって逆効果になります。 もし治療をすることに対して不安な気持ちが強いのであれば、吸入または静脈内鎮静法という方法もあります。リラックスしながら治療をすることが可能な方法もあるので、かかりつけ医と相談してください。