こんにちは

先日、歯科用CTをおすすめしたところ、レントゲン写真だけではダメなんですか?とお聞きになった方がおられました。

実は、レントゲン写真ではわからなくても、歯科用CTを撮影すると病気の状態が明らかになるということは、かなり多いものなのです。

今回は、歯科用CTの特徴やレントゲン写真との違いなどを中心にお話しします。

〇歯科用CTとレントゲン写真の違い

歯科用CTとレントゲン写真との違いについてお話しします。

●3次元的な画像情報か2次元的な画像情報か

歯科用CTとレントゲン写真の最大の違いが、これです。

歯や顎の骨は、立体、すなわち”3次元”の物体です。

普通のレントゲン写真では、3次元の物体を平面、すなわち”2次元”に写し出します。

このため、歯や顎の骨の奥行きがわかりません。

一方、歯科用CTは歯や顎の骨を立体的に捉えることができます。

しかも、見る方向も任意の方向が選べます。

正面から見る、横から見る、上から見る、斜めから見るなどいろいろな方向から見ることができます。

歯や顎の骨を立体に捉えられ、かつ見たい方向から見ることができることが、レントゲン写真にはない歯科用CTならではの最大の特徴です。

●病気の原因を明確に確認できる

レントゲン写真は、3次元の歯や顎の骨を平面に写し出しますので、さまざまなものが重なり合ってしまいます。

例えば、食べるときに噛むと痛いとき、しばしば歯の根の先に膿の袋ができています。

ところが、形や向きによっては他のものが重なりあい、よく見えません。

歯科用CTなら、重なり合わないので、膿の袋ができていてもはっきり見えます。

歯科用CTなら、このように病気の原因もよくわかります。

●病気の範囲もよくわかる

歯科用CTは、病気の広がり具合をみるのにも有用です。

歯周病が進行すると、歯の周囲の骨が溶けてくるのですが、レントゲン写真では骨が溶けていることがわかっても、どの部分の骨がどれくらい溶けているのかまではよくわかりません。

歯科用CTなら、歯の周囲が立体的にわかるので、骨のダメージ具合もしっかりわかります。

また、親知らずの歯冠には含歯性嚢胞というオデキのようなできものがしばしばできますが、歯科用CTならその広がりや奥行き、隣の歯への影響なども良くわかります。

このように、歯科用CTなら、3次元の画像情報が得られるので、病気の原因や広がり具合が明確に判断できます。

●外科処置のリスク軽減

例えば、インプラント治療でインプラントを顎の骨に埋め込むとき、顎の骨の形を事前に把握しておくことは、成功率を高めるだけなく、安全性を確保するための基本です。

レントゲン写真では顎の骨を立体的に捉えることができます。

歯科用CTなら骨の凸凹や神経や血管の走行がよくわかりますので、外科手術時の安全性が高まります。

●軟組織もある程度写る

レントゲン写真も歯科用CTも基本的には歯や顎の骨などの硬組織という組織の検査に適していますが、唇や舌などの軟組織には適していません。

ところが、歯科用CTならある程度は軟組織を見ることができます。

〇保険診療と歯科用CT

歯科用CTは、保険診療では”歯科用3次元エックス線断層撮影”とよばれ、撮影が認められています。

ただし、保険診療での歯科用CT撮影には条件が定められています。

●保険診療で撮影できる場合

撮影が認められているのは、歯科用エックス線写真撮影や、パノラマエックス線写真で病気や症状の診断が難しい場合です。

簡単にいうと、「普通のレントゲン写真ではよくわからないときに限って、歯科用CTを撮影してもいいですよ」という意味です。

●保険診療での歯科用CTの適用症例

①埋まっている親知らずの状態を確認するとき

②下顎の骨の中には、下顎管という顎先や下唇の感覚の神経や太い動脈が走っているトンネルがあります。

親知らずが下顎管とどのような位置関係にあるのかを確認するとき

③顎関節症などの方の顎の状態を確認したいとき

④顎の骨の形を詳しく確認したいとき

⑤腫瘍などの広がり具合を確認したいとき

⑥そのほか、普通の歯科用レントゲン写真では確認が難しいとき

具体的には、上顎の前歯部に埋まっている過剰歯という余分な歯の位置を確認する場合や、進行した奥歯の歯周病の状態を確認する場合などです。

以上の場合は歯科用CTで検査することができます。

●インプラント治療は保険診療の適用外

前述した条件に当てはまらない歯科用CTは、全て保険診療の適用外です。

例えば、インプラント治療では歯科用CTが欠かせませんが、インプラント治療での歯科用CTは保険適用外です。

〇まとめ

今回は、歯科用CTについてお話ししました。

歯科用CTは、

①3次元的な画像情報か2次元的な画像情報か

②病気の原因と広がりを明確に確認できる

③外科処置時のリスク軽減

④軟組織もある程度写る

など、レントゲン写真にはない利点を数多く持っていますし、保険診療でも撮影が認められています。

安全で安心できる歯科治療を提供するために、レントゲン写真に加え、歯科用CTを撮影していることをご理解いただければと思います。