こんにちは
顎の関節が痛くなる、お口の開け閉めが難しくなる、このような症状がある場合に疑われるのが、顎関節症です。
顎関節症になると、食事や会話など日常の生活にも影響が現れますので、多くの方が、早く治したいとお望みになります。
ところが、顎関節症の治療は長引くことが多いです。
今回は、顎関節症についてお話しします。
〇顎関節症とは
顎関節とは、耳の前あたりにある上顎骨と下顎骨がつながった関節で、ここを動かすことでお口を開けたり閉めたりします。
顎関節症は、この顎関節の動きが悪くなる病気です。
およそ2人に1人が一生のうちに一度は経験すると言われているので、比較的頻度の高い病気です。
●顎関節症の症状
顎関節症の症状は、さまざまです。
多いのが、”お口を開けたり閉めたりするときに痛みを感じる””お口を開け閉めするのが難しくなる”といったものです。
また、お口を開け閉めするときに音がするという症状もあります。
●治療が必要な場合とそうでない場合
顎関節症の症状が現れたとして、全ての顎関節症に何らかの治療が必要なのかというとそうではありません。
例えば、症状が開け閉めするときの音だけという場合は、原則的に治療は必要ないとされています。
首や指を動かして音がなっても整形外科で治療を受けることはないように、顎関節症も音だけなら、耳の前でなるのでうっとうしいですが、治療の必要はありません。
お口を開け閉めすると痛い、開けづらいといった、機能的に支障をきたした場合に治療が必要となります。
〇顎関節症の治療法
顎関節症の治療法についてご紹介します。
●薬物療法
お口を開け閉めするときに痛む場合、非ステロイド性消炎鎮痛薬という痛み止めの薬を使って、痛みの緩和を図ります。
また、お口を開け閉めする筋肉を咀嚼筋と言いますが、咀嚼筋の痛みを認める場合は、筋弛緩薬を使うこともあります。
●マウスピース(スプリント療法)
マウスピースは、上顎、もしくは下顎の歯に被せるプラスチックのカバーのような治療器具です。
ゴムのようなやわらかいタイプや、反対に硬いタイプがあります。
マウスピースを装着することで、顎関節や筋肉への負担を軽くして、症状の改善を図ります。
なお、マウスピースは、全ての顎関節症の治療に有効というわけではなく、あくまでも顎関節や咀嚼筋の痛みの緩和を図るものです。
3ヶ月以上続けても、痛みが改善しない場合は、他の治療法に変えた方が良いことが多いです。
●理学療法
理学療法とは、簡単にいうとマッサージです。
咀嚼筋をマッサージをしたり、弱い電気を通したりして、ほぐすことで、咀嚼筋の動きを改善させ、痛みを軽くします。
●マニュピレーション
マニュピレーションとは、顎関節やその周囲の筋肉の動きを改善させるために歯科医師が行う運動療法です。
痛みの緩和を目的とした方法や、お口が開かなくなったときに開けやすくするための方法などさまざまな方法があり、症状に合わせて行われます。
〇顎関節症のセルフケア
顎関節に痛みがあり、お口を開け閉めするのが難しくなっている場合、安静を図ることが大切です。
セルフケアも安静を図ることが中心となります。
●大きく開けない
大きなお口を開ければ開けるほど、顎関節の動く範囲が広くなります。
具体的には、”大きなものを食べる””あくびをする””歯科治療で長時間お口を開ける”などです。
顎関節の安静を保つためには、こうしたことに気をつけて、なるべく大きなお口を開けないようにしましょう。
●硬いものを噛まない
硬いものは、やわらかいものよりもしっかりと噛まなければ食べられません。
しっかりと噛むためには、顎関節やその周囲の筋肉をよく使わなければならないので、それだけ顎関節や筋肉に加わる負担も大きくなります。
顎の痛みや動きが悪いと思ったら、硬いものを食べるのは避けて、やわらかい食べ物を選んで食べるようにしてください。
●歯と歯を当てない
あまり意識することがないのですが、上顎と下顎の歯は、噛むとき以外は当たっていない状態が正常です。
上顎と下顎の歯が当たっている状態とは、筋肉や靭帯、顎関節が、働いている状態です。
当たっている状態が長時間続くと、それだけ筋肉や靭帯、顎関節に負荷がかかります。
歯ぎしりや食いしばりなどをしないようにしましょう。
下の歯で上の歯を触るだけでも、顎関節や筋肉には負担なので、軽く触れ合わせるのもご注意ください。
●頬杖をつかない
頬杖をつくと、顎の位置が左右にずれます。
実は、顎にとっては左右に動かすのはかなりの負担です。
頬杖をつく癖のある方は、その間ずっと顎関節に負荷がかかった状態になっています。
同様に、顎を左右に動かす癖も顎関節に良くないです。
頬杖をついたり、顎を左右に動かす癖のある方は、止めるようにしてください。
●ストレッチ
セルフケアでのストレッチには、さまざまな方法があり、症状に合わせて選びます。
いずれの方法も、顎関節の機能回復を目的としており、毎日行っていただくことで、顎関節の動きを改善していきます。
〇顎関節症の特徴
顎関節症の治療上の特徴は、以下の通りです。
●元に戻せる治療法が第一選択
顎関節症の治療法は、原則的に元の状態に戻すことができる、すなわち可逆性のある治療法からまず選ばれます。
虫歯治療や歯周病治療のように、初回から歯を削る、歯石を取るなどの変化を伴う治療が行われることは稀です。
●時間がかかる
例えば虫歯になり歯が痛む場合、歯の神経を取れば痛みが解消できます。
顎関節症では、このように何らかの処置をすることで、パッと痛みが解消できる、簡単にお口が開くようになるようなことはあまりありません。
治るまでに時間がかかるので、安静を図ることで、症状を悪化させないようにすることが大切です。
〇まとめ
今回は、顎関節症についてお話ししました。
顎関節症は、顎関節の炎症により、お口が開きにくくなったり、開け閉めするときに痛くなったりする病気です。
顎関節症に対しては、鎮痛剤や筋弛緩剤などの薬物治療、マウスピースを使った治療などが行われていますが、あくまでも症状の緩和を目指した治療です。
大切なことは安静を保つことです。
当院は、顎関節症の専門知識や治療経験の豊富な歯科医院です。
顎関節症の症状でお悩みの方は、当院でぜひご相談ください。